研究課題/領域番号 |
25420320
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西村 知紀 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 技術専門職員 (10396781)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 半導体 / MOSFET / ゲルマニウム / フェルミレベルピンニング |
研究概要 |
本年度は主に金属と形成する界面におけるフェルミレベルピンニング機構の前に,この少なくとも構造上は基準となりうる原子レベルでの平坦化Ge表面についての理解を試みた.Ge基板の水素雰囲気中の熱処理により,研究計画段階において既知であった(111)面の他,(110)面,(100)面においてステップ&テラス構造を有する原子レベルでの平坦化に成功した.本研究と連携して,Geを用いた電界効果トランジスタにおいて,チャネル界面のラフネスに起因したキャリア移動度の劣化を抑制し,大幅な特性の向上にも成功している.また,基板の面方位により平坦化可能な温度域が異なることを明らかにした.基板表面の平坦化には(111),(110)面上では500℃の低温が十分である一方,(100)面では700℃以上の温度が必要となる.これは表面超構造を形成しない(100)表面は他の面と比較して表面エネルギーが高く,超構造の形成が平坦化に必要であるとすると合理的に理解できる.また,この水素による表面平坦化効果はSiにおいても報告されているが,Siの場合と異なりGe表面に容易に酸化膜が形成されることが分かった.また水素雰囲気中の熱処理直後においても水と形成する表面の接触角は非常に小さいことと合わせ,表面のGe原子がSiの場合と異なり水素で終端されていない可能性を示唆する. 一方で,これら原子レベルで平坦化されたGeと金属とで形成された金属/Ge接合の電流-電圧特性は,前述の水素雰囲気中の処理温度により大きく変化することが分かった.具体的には表面構造とは独立にバルクのGe中にアクセプタが導入されていることが推測される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述の通り、本年度は基準となる原子レベルに平坦化したGe基板が,平坦化プロセスによって表面構造のみならずバルクの特性を変化させるといった予期せぬ結果が得られた.故に,本研究における金属と形成する界面という特殊な系に注目する以前に,バルクGeそのものが平坦化プロセス等の熱処理により受ける影響について重点的な調査を進め,それに基づいたGe材料の理解を試みた.研究計画における”界面の理解”という点においての達成度としてはやや不足している部分もあるが,Geが金属と形成する界面の理解において,バルク特性の自身が変化することが明らかになったことを考慮すれば,Geの理解という点においては順当な進展があったといえる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果を受けて,平坦化プロセスを介して生じるGeバルクへの影響,特に熱プロセス,金属拡散プロセスにおけるGe中への欠陥生成,及びアクセプタ準位形成との相関を解明し,表面構造及びバルクのGe共により理想的な系を構築する点を新たに次年度より進めたい. またこれらの結果に対してフィードバックを行ないながら,金属-Ge間に導入する極薄絶縁膜によるフェルミレベルピンニングの緩和効果について,極薄絶縁膜を用いない手法に基づいた界面評価を展開する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度,金属/Ge界面のバンドアライメントを評価する手法の構築について,物品の購入を中心に予定していたものの,Geについては界面形成以前に容易にバルクの特性が変化することが明らかとなった.故に界面評価手法の構築を行なう前段階としてバルク特性の変化の理解に注力をする必要があると判断し,界面評価手法の構築を次年度より展開することとしたため,次年度使用額が生じた. 計画当初,本年度予定していた界面評価手法の構築を軸としながらも,新たに明らかとなったGeバルク特性の解明について,主にGe結晶欠陥に注目し,エッチングを用いたエッチピットの観測,及び容量測定に基づいた電気的欠陥準位密度の評価に展開する上で必要な化学薬品や測定備品の購入を検討する.
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