本年度は主に金属的な金属とゲルマニウム(Ge)の化合物(ジャーマナイド)/Ge界面のフェルミレベルピンニング(FLP)に焦点をあてた。ショットキー特性の解析により,従来の元素金属/Ge界面で生じる金属の仕事関数に依存しないGeの価電子帯端近傍への極めて強いFLPと比較して,ジャーマナイド/Ge界面のFLPはあきらかに弱くなることを見い出した. 着手当初は,昨年度までの結果を踏まえた界面反応に着目し,反応が完了して進まない系としてジャーマナイド/Ge界面を選択したが,近年報告されている特殊な金属(シリコン化合物,グラフェン,Sn等)/Geエピ界面等におけるショットキー障壁が従来のFLPの傾向からそれる事も併せて考慮した結果から,従来半導体の特性のみで決まると考えられている半導体ギャップ内への電子の染み出しによるMetal induced gap states(MIGS)において金属の自由電子密度を考慮することによって,矛盾なく統一的に理解できる可能性に至っている.(即ち金属の自由電子密度の低下によりMIGSが弱くなり,FLPが弱くなる) またジャーマナイド/Ge界面のショットキー障壁高さは,元素金属/Ge界面とは異なりGeの面方位依存性が顕著に現れており,たとえ金属/Geダイレクト界面においても適切な金属と面方位を選択することでGe伝導帯に対してオーミック性が得られることが明らかとなった.このジャーマナイド/Ge界面におけるショットキー障壁高さの面方位依存性についても,半導体のバルク特性で決まるMIGSが緩和した結果として矛盾なく解釈可能である. 以上から金属/Ge界面は金属の自由電子密度が高いとbulkの特性できまる極めて強いFLPを示す系であるが,金属の自由電子密度の低減によりそのFLPが緩和すると共に界面のSBHを大幅に制御可能となるというモデルの構築に至っている.
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