研究課題/領域番号 |
25420323
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
石川 亮 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (30333892)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 高周波 / マイクロ波 / 無線通信 / 無線電力伝送 / 高効率 / 電力増幅器 / 整流器 |
研究概要 |
本研究は、応用が広がり続けているマイクロ波無線通信技術、および次世代のエネルギー有効利用を目指すマイクロ波無線電力伝送技術、等々に対し、これらの応用に欠かせない超高効率動作を実現するマイクロ波電力増幅器および整流器の実用的な設計技術を提供するものであり、そのための、新たに考案するトランジスタ素子真性部最適負荷インピーダンス導出システムの確立・高性能化、および、それに基づく高効率のDC-RF変換(増幅器)およびRF-DC変換(整流器)の設計理論の確立を目指すものである。 研究開始の前年度に基本的な原理を提案し、その第1実施例として、提案設計理論に基づき、化合物半導体のGaAs HEMT素子を用いて増幅器を設計・試作し、1.9 GHz帯で77%の高効率を実現した結果を報告しているが、今回の研究初年度では、提案設計手法の汎用性を示すために、同じ素子を用いて、2.45 GHz帯および5.8 GHz帯で増幅器および整流器を設計・試作し、各々、2.45 GHz帯では78%(DC-RF変換)、77%(RF-DC変換)、5.8 GHz帯では71%(DC-RF変換)、68%(RF-DC変換)と、各々高効率動作が得られることを実証し、報告を行っている。 また、考案するトランジスタ素子真性部最適負荷インピーダンス導出システムの高性能化として、トランジスタの電圧・電流波形を精度良く測定し、インピーダンスの測定精度を向上させるための高分解能オシロスコープを導入し、測定精度を一桁向上させた計測システムを構築した。また、高出力前置増幅器を組み込むことにより、それまでは、動作電圧5 V程度までの低電圧動作トランジスタにしか使用できなかったのを、近年利用が盛んなGaN HEMT 素子にも対応可能な30 V程度までの高電圧動作を可能とした。 上記の新たに構築したシステムの評価を行うために、GaN HEMT 素子を用い、同様に提案設計理論に基づき増幅器の設計・試作を行い、5.5 GHzで80%の高効率動作を確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的として掲げた、トランジスタ素子真性部最適負荷インピーダンス導出システムの高出力素子への対応、測定精度の向上に関しては研究実績の概要で記した通り既に対応が図られており、成果が得られている。トランジスタ素子真性部最適負荷インピーダンス導出システムでは、それまで、2出力任意波形発生装置およびデジタルオシロスコープの2台を機器制御ソフトウェアで制御し、信号処理もソフトウェア上で行っている。それに対し、測定精度向上および高出力素子対応のため、デジタルオシロスコープ装置の入れ替え、およびバイアス電源装置が追加されており、それに伴う制御プログラムの書き換え作業が必要であった。 進行上の都合、設計理論におけるトランジスタ非線形容量の考慮に関する解析を後回しにし、先に整流器におけるトランジスタゲート側調整回路の回路解析を行い、ゲート側の最適インピーダンス値の算出式を導出した。この解析に基づき実際に研究実績の概要で記した通り、整流器を2.45 GHz帯および5.8 GHz帯で試作して高効率動作を実証した。 以上の通り、当初の実施予定内容の順番の入れ替えはあるものの、順調に課題をクリアしてきており、また、設計理論に基づいて試作されたGaN HEMT 増幅器において、数値目標であった効率80%以上を5.5 GHzで達成し、本手法の有用性を示せた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題としては、残されている以下の課題を行う予定である。 トランジスタ寄生容量の非線形特性が負荷特性に与える影響に関する解析を行う。トランジスタ増幅・整流デバイスの高効率化に必要な高調波処理回路に求められる負荷特性は、真性部最適負荷、および寄生容量を考慮して算出される。これらの寄生容量を線形近似で実測し、1.9 GHzにおいて実際に高効率増幅器を実現しているが、周波数が5.8 GHzと高くなると、サセプタンスの増加により特に高調波で非線形の影響によるズレが生じると考えられる。そこで、トランジスタ内非線形成分の非線形関数系を考慮した場合と考慮しない場合の関係を導き出す。解析的な導出が難しい場合は、回路シミュレータ等を利用して系統的な特徴を見つけ出し、経験式として定式化を図る。 高調波処理回路の設計手法を確立する。高効率動作のためには高調波での消費電力を無く必要があることから、高調波をリアクティブ終端(力率零)する必要がある。このための高調波処理回路の基本構成すでに提案・実証済みであり、原理上任意次数の高調波処理が可能である。ここでは電磁界シミュレータを用いた設計結果をいかに正確に実物で実現するかが課題であり、周波数依存の少ない良質かつ加工精度の高い材料の選定が重要となり、種々の材質で試作・評価を行い設計精度の向上を図る。以上の課題に加え、適切な時期に真性部最適負荷インピーダンス計測システムの自動プログラム作成、そして、5.8 GHzでの高効率増幅・整流デバイスの設計・試作を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
高精度デジタルオシロスコープの低価格版が新たに販売され、そちらを導入したため。 残額はセラミック基板試作一回分程度であるため、その試作費にあてる予定。
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