研究最終年度では、窒化物半導体デバイスプロセス技術の開発と、窒化物半導体LEDとシリコン回路のウェハレベルの一体化の実証を行った。 (1)窒化物半導体とシリコン集積回路の一体化プロセスで懸念されるダメージ効果を評価した。p型及びn型のGaNの欠陥生成の差異に就て電子スピン共鳴法などを組み合わせた検討を国際共同研究により実施した。また、デバイスプロセスにおける窒化物半導体表面の乱れ層の形成と、その表面処理技術について、X戦光電子分光法などの表面分析や、電気的特性から評価し、乱れ層除去に沸騰塩酸処理が有用であることを報告した。 (2)窒化物半導体とシリコンの一体化プロセスや、電子デバイスの安定動作に重要な独自の表面パッシベーション技術について、表面波プラズマを応用した独自のシリコン窒化膜、及びシリコン酸化膜の堆積に成功した。また、この独自開発技術を窒化物半導体表面に適用し、300℃の堆積ながら、6MV/cm以上の高い絶縁破壊電圧が実現でき、また窒化物半導体に対して低い界面準位密度を有する絶縁体/半導体界面の形成が得られるなど、デバイス応用に有用であることを示すデータを得た。 (3)シリコン基盤と窒化物半導体を一体化する技術の検討を進め、表面活性化技術にもとづいた融着技術の開発を行った。エピタキシャル成長した窒化物半導体LED基板と、シリコン基板を一体化した異種接合基板を形成し、イオン注入プロセス、窒化物半導体層ならびにシリコン層に熱損傷などのプロセスダメージを導入しないシリコンCMOSプロセスに準拠する技術を開発した。実証実験として、一体化基板上に窒化物半導体マイクロLEDと、これを駆動するシリコントランジスタを隣接して形成し、トランジスタによるLEDの発光制御に世界で初めて成功した。この結果は、異種接合基板上に異種材料デバイスが混載できることを実証したものである。
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