研究実績の概要 |
本研究は、強磁性共鳴近傍を動作点とし超小型化が可能なことを特徴とする非可逆伝送素子(アイソレータ:バイアス磁場が印可されたフェライト中における磁気モーメントの歳差運動〔ジャイロ磁気効果〕と電磁波の磁場との相互作用を利用して、マイクロ波などの電磁波を1方向にのみ通し、逆方向への通過は阻止する、いわゆる電磁波に対して非可逆的な伝送特性を持つ素子)に関して,マルチバンド化の可能性を追求することを目的とする。 平成26年度には第4世代移動通信システム(IMT-Advanced)用デュアルバンド対応のアイソレータの設計と試作を目指し、以下の研究成果を得た。 周波数2GHzと4GHzについては、トップマウント型およびボトムマウント型ともに、挿入損失0.8dB以下、アイソレーション10dBを満たす素子を設計できた。800 MHz帯における非可逆伝送特性の改善を目的として電磁界解析により素子設計と非可逆伝送特性の検討を行った。提案アイソレータは素子サイズ = 2 mmの制約のもとでは 800MHz帯では波長に対して線路長が短すぎて,良好な特性は実現できていなかった。本研究では水平方向の素子サイズを大きくすることを少し許容することで特性改善を図った。 CPWを導入したトップマウント型アイソレータにおいて,他の2つのアイソレータと比べて小さな素子サイズ(直径 = 4 mmで非可逆伝送特性の目標値を達成することができた。具体的には,帯域幅28 MHz,挿入損失最良値0.69 dB,帯域内アイソレーション10 dB以上が実現できることがわかった。以上の成果を総合すると,小型化にはCPWを導入したトップマウント型アイソレータが適しているといえる。
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