研究課題/領域番号 |
25420341
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
本田 徹 工学院大学, 工学部, 教授 (20251671)
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研究分担者 |
山口 智広 工学院大学, 工学部, 准教授 (50454517)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | GaN / 発光ダイオード / MBE / 結晶成長 / リフトオフ / 透明電極 / 酸化物 / x線回折 |
研究実績の概要 |
C面4H-SiCおよびサファイア基板を用いてAl単結晶成長を試みた。現時点では4H-SiC基板よりもコスト的に優れるサファイア基板を中心に検討を進めた。分子線エピタキシャル成長法(MBE)法を採用し、Al結晶層から一貫してGaNを成長した。また、0.2 µm程度のAl結晶上に成長したGaN薄膜は超音波を用いたリフトオフが可能である。Alの表面窒化後GaN薄膜成長を行うことがAl結晶を成長後に残す上で重要であるが、窒化のみではAlNの表面被覆が不十分ではないかと考え、窒化時間の検討およびAlNの追加堆積を検討した。Alの表面窒化に関しては、窒化によりAlNが表面上に形成され、時間とともに被覆率が増大するが、表面平坦性も失われる結果となった。最適時間が存在すると考える。この場合、表面被覆率が十分ではなかった。表面被覆率が低い場合、GaN成長時にGa金属とAl金属が反応し、Alエッチング犠牲層が破壊されることがわかった。そこで、AlNの追加堆積を採用した。この結果、GaN成長後にAl結晶が残ることがわかった。 また、透明電極については、Ga2O3およびGa-In-O薄膜の使用を検討した。溶液法の一種である分子プレカーサ-法による酸化物薄膜の形成を行った。薄膜成長に製作した。GaN発光層の発光波長370nmに対して80%以上の透過率が確認され、抵抗率も10-2 Ω•cm程度を実現している。課題も山積するが、透明電極として使用する場合にはGa-In-O薄膜が有効ではないかとの結論を得ている。また、ショットキー型GaN素子の試作も行った。Ga-In-O薄膜を電極として用いた場合についての実験を行った結果、オン抵抗の若干の上昇が観測されたが、370 nm帯のGaNバント間遷移関連発光が50%以上多く観測され、Ga-In-O薄膜が透明電極として使用できると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サファイア基板上結晶Al薄膜の形成および表面窒化、その後のGaN薄膜製作を実現した。しかしながら、Al層とGa金属の反応が確認され、Al犠牲層にダメージを与えていた。そこで、AlN追加堆積層の挿入を計ったところ、Al結晶を残したまま、GaN薄膜の成長が安定的に実現できることを明らかにした。 Ga-In-O薄膜を利用した透明電極について検討を行い、光学的透明性および抵抗率について評価を行った。透明性については十分素子応用が可能である結果を得た。また、抵抗率については、低抵抗化の検討が必要であるが10E-2 Ωcm程度のものを実現した。GaN系ショットキー型発光素子に搭載した結果、GaNバンド端発光に起因するエレクトロルミネッセンス強度が50%増大する結果を得た。この結果は、Ga-In-O薄膜が近紫外透明導電膜として機能する可能性を示唆するものである。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね順調に研究が推移している。しかしながら、新たに判明したGaN結晶成長上の課題解決に注力し、その後、予定通り発光ダイオードの試作および素子構造検討を行う。 結晶Al薄膜上GaNの分子線エピタキシャル成長に関しては、立方晶GaNの混入および積層欠陥の低減を中心に研究を進める。また、化学リフトオフについては、Al薄膜の膜厚依存性および素子分離技術による均一なリフトオフの実現を検討する。また、透明電極に関しては、低抵抗化を進めるため、不純物添加の可能性を検討する。 素子の電流リークパスが再現性に影響を与える可能性があるので、逆方向電流リークパスをふさぐ手法についても検討を進める。手法としては、これまでに行ってきたAlフェースパック法を基に考える。
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