研究課題/領域番号 |
25420342
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
前田 譲治 東京理科大学, 理工学部, 教授 (10256670)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 光ファイバ通信 / アクセスシステム / 半導体光増幅器 / 波長多重 / 下流再変調 / WDM-PON |
研究実績の概要 |
次世代の加入者系光ネットワークとして有望な WDM-PON において、柔軟性に富み、かつ低価格な加入者端末 (ONU) を実現することを目的として、ONU のカラーレス化の研究を行っている。具体的には、半導体光増幅器 (SOA) の飽和特性を用いる「下流再変調方式」において、数 GHz 程度までの信号周波数にしか示さないSOAの飽和特性を、ファブリペロエタロンによる光学処理によってアシストし、広帯域に渡って下流信号の抑圧を実現しようとするものである。 平成26年度は、平成25年度に得られた基礎的知見をもとに、提案方式の送受信器対向特性を実験によって調べる一方、SOAの理論解析の問題点を探った。 ・実験 疑似ランダムビット列 (PRBS) によって強度変調を施した光信号を下流信号に見立て、透過帯域幅 4 GHzのファブリペロエタロンとSOAを縦続接続したデバイスに入射して信号抑圧の実験を行った。この結果、デバイスを用いない場合に比べ、最大で 3.7 dB の信号抑圧を得た。また、抑圧された信号に再度、PRBSによって強度変調を施し、これを上り信号に擬して、下り・上り両信号の符号誤り率を測定した。この結果、下り信号の消光比に関して、下り・上り信号のシステム特性がトレードオフの関係にあることが確認された。 ・理論解析 キャリア密度に関するレート方程式を解くことにより、飽和領域におけるSOAの周波数応答特性を調べている。デバイスパラメータを実験結果に基づいて決定する際、自然放出光パワーとキャリア寿命をパラメータとしてフィッティングを行っているが、入力信号の変調が深い場合には、広い周波数範囲におけるフィッティングが不可能であることが明らかになった。これは、モデルに導入している近似に問題があると推察される。この問題は、疑似ランダム信号を入力した場合の結果に影響を与える可能性があるため、対象に適したモデルの再検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した計画のうち、疑似ランダム信号抑圧の数値解析については、モデルの問題点が明らかになったため、平成27年度に持ち越すこととした。 一方、実験については順調に進んでおり、記載の事項をすべて実施することができた。これらの成果は順次、学会等に発表の予定である。 なお、平成27年度に検討予定の波長チューニング技術の検討に当たり、納期のかかる温度調整可能なエタロンモジュールを、予定を前倒しして発注することとした。このため、平成27年度交付予定の予算を前倒しにて交付していただいた。なお、本モジュールはすでに納品されており、実験が進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
研究の進め方は、おおむね交付申請書に記載の通りとする予定である。 理論解析においては、実験に整合する理論モデルを早急に構築する。これを用いて、疑似ランダム信号の変調成分抑圧のシミュレーションを可能にする。 実験においては、平成26年度と同様の実験を、条件を変えて実施し、より実用に近い条件での有効性を明らかにする。具体的には、波長チューニングの実現、下り信号パワーのレベル低下に対する伝送特性劣化観測とその対策を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
エタロンモジュールのための前倒し分を含めて、ほぼ予算を消化するように努めたが、2万円強の残高が発生した。無理に消化するよりも、次年度予算と合わせて使用したほうが合理的であると判断した。
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次年度使用額の使用計画 |
制御用電子部品や光学部品等の消耗品費の一部として使用する予定である。
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