H27年度は、以下2つの計画を遂行した。 1つ目は従来線上の光ファイバ集光器の受講特性改善に向けた研究であり、今期は新たな改善策として、光ファイバ内に分布させる散乱体形状を従来の球状ではなく直方体や扁平円盤形状とすることによる散乱効率改善に取り組んだ。散乱時に明瞭な角度依存性を与えることで入射光の取り込み効率を向上させつつ、導波路伝搬を抑制させる狙いで、基本モデルの作成と散乱効率シミュレーションを行ったが、データの信頼性が不十分で外部発表にまで至らなかった。 昨年度着手したもう一方のミクロな導波路構造の研究では、5件に及ぶ対外発表成果を結実させた。本研究は、ナノサイズの構造の異なる光導波路に着目し、基本的な光結合特性を評価したものである。このようなミクロサイズの光導波路は光集積回路の基本技術となる。具体的には、高い光閉じ込め率が得られる高屈折率コントラスト構造を有する誘電体光スロット導波路とプラズモニックメタルギャップ導波路の結合問題をシミュレーション評価した。両導波路は有効な光閉じ込め領域サイズが同等であり、高い結合性が期待できるが、これまで評価されてきていなかった。従来の単純なスラブ導波路構造とメタルギャップ導波路との接合に比べ、僅かであるが結合効率の改善が確認でき、誘電体スロット導波路の微細導波路への適用性が示された。 年度後半期には、メタルギャップ導波路自体の応用性を調べるために基本的なT型形状の2入力1出力の光結合器の評価を実施し、入力光の相対位相により出力光パワーへの結合効率がほぼ0%~100%にわたり制御できることを見出した。この特性を生かすことで一例として光コヒーレント受信器などにおいて用いられる光90度ハイブリッド結合器が簡易に実現できることをシミュレーションにより実証した。 以上の成果は、本年度、学術論文2誌、国内会議2件、書籍1件として掲載済である。
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