研究課題/領域番号 |
25420348
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
大谷 直毅 同志社大学, 理工学部, 教授 (80359067)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 発光効率の改善 / 動作寿命の改善 / 植物の蛍光色素 |
研究概要 |
ほうれん草から抽出した色素を用いて作製した有機EL素子の発光特性と動作寿命の改善を目的とし、有機EL素子構造内部に薄膜正孔阻止層と薄膜電子輸送層を導入することで発光特性の改善を目指し、カロテノイドの抗酸化作用を用いることで動作寿命の改善を目指した. 正孔輸送/注入層および電子輸送層を含む五層構造により発光輝度の改善に成功した。この電子輸送層は高分子TAZを用いており正孔阻止層の役割も持つことが効果的であった。また、抽出したカロテノイドの抗酸化作用を用いることで素子の酸化を抑え、動作寿命を延ばすことに成功した。カロテノイドを五層のどこに用いることが効果的かを調べた結果、活性層に隣接するTAZに用いると抗酸化作用が顕著に現れることが分かり、とくにTAZとカロテノイドの混合比が1:1のときに素子の動作寿命がもっとも長くなった。カロテノイドが無い場合、素子の輝度は4日後には3割程度まで低下したが、カロテノイドを含む素子では4日後でも輝度は7割以上を維持していた。 ほうれん草はクロロフィルに起因する赤色の発光が実現できるが、幅広い応用を考えた場合、青色や緑色など波長の異なる発光材料の開拓が必要である。トマトから抽出した溶液のホトルミの光学特性を調べたところ、クロロフィルの発光以外に緑色(波長540nm)の蛍光が確認された。この緑色発光はリコペンによるものと考えられる。 トマト以外の多くの野菜、植物から抽出した溶液の蛍光特性を調べた。バナナの皮やアオダモから青色で発光する色素が抽出された。蛍光物質はそれぞれクロロフィル異化生成物、エスクレチン等と考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書の平成25年度実施計画には、主に3つの目標が掲げられている。(i)素子構造最適化の検討、(ii)カ ロテノイドの抗酸化作用の評価、(iii)クロマトグラフィによる色素抽出の高精度化、である。このうち、(i)については5層構造による発光効率の改善が達成されている。ただし、目標としていた天然色素ではなく市販の色素の利用である。また(ii)については一定の成果が得られたと考えている。(iii)については、実行しているがノウハウに依存する部分も多く成果が得られていない。しかし、(i)と(ii)の成果については国際会議ISOME2014(5月、東京)にて発表する予定であり、そのあと論文化する。 平成26年度に引き継がれる研究課題も多いが、自己評価として(2)おおむね順調に進展している、としたい。
|
今後の研究の推進方策 |
多層構造化によって素子の発光効率は改善された。しかし、実用的なレベルには達していない。考えられる原因はいくつかあるが、抽出した色素の濃度に再現性が乏しく、濃度消光を抑えるためのホスト材料の濃度の決定が難しい。そのため、カラムクロマトグラフィなどの手法を用いて、抽出色素の濃度を定量化したい。また今回の成果では電流注入層にTAZを用いることが正孔阻止層の役割も果たすためたいへん効果的であった。しかしながら、正孔注入/輸送層の2層は従来からよく用いられている材料である。したがって、クロロフィルに適した正孔注入材料を検討する必要がある。 また活性層以外は市販の薬品を用いているため製造コストの低価格化が実現できない。したがって、これらの層を構成する材料に適した植物由来の天然色素を検討する必要がある。 クロロフィルの赤色以外で発光する色素もいくつか見つけることができた。これらのダイオード化も必要である。発光波長が短波長化してくるとホスト材料の選択が難しくなってくるが、この問題を解決して電子/正孔注入層の材料も検討して電流注入による発光を実現したい。
|