本研究では、ダイヤモンド表面の正孔伝導層と各種ゲート絶縁膜を選定し組み合わせることで、超高速・大電流・高耐圧・高温動作可能な省電力ノーマリオフ型ダイヤモンド電界効果トランジスタ(FET)の開発を試みている。具体的なゲート絶縁膜材料は、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ハフニウム(HfO2)、ランタンアルミネート(LaAlO3)、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化ジルコニウム(ZrO2)を用い、各種の成長方法は有機金属化合物気相成長(MOVPE)法、原子層体積成長(ALD)法、超高真空スパッタ法を用いた。 平成25年度において、デバイスプロセスの条件により、水素終端ダイヤモンドFETの閾値特性(ノーマリオン/オフ)を変化させることが可能であることを発見した。そのため、平成27年度では、主にこの物理現象(閾値特性現象)を明らかにするために、ダイヤモンドと各種絶縁体の界面の微細構造観察を収差補正走査型透過型電子顕微鏡法を用いて行い、電気特性及びFET特性との比較を行った。その結果、負電荷を有す界面の吸着/脱離もしくは絶縁体膜中の負電荷の生成/消滅が、表面正孔伝導層の生成/消滅に寄与し、閾値特性(ノーマリオン/オフ)が制御可能であることを結論付けた。またこの結果を踏まえプロセス条件の再検討を行い、オン電流値としては比較的良好な値(-100~-200 A/mm)を比較的再現性良く得ることに成功した。
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