研究課題/領域番号 |
25420354
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
梅比良 正弘 茨城大学, 工学部, 教授 (00436239)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | スペクトラム利用率 / 受信電力 / 累積確率分布 / ホワイトスペース |
研究概要 |
本研究は、スペクトラム利用率の高精度測定法を開発し、空間的・時間的な周波数利用状況の測定、ホワイトスペース推定手法の確立を目的とし、(1) 周波数bin毎に低S/N で誤検出・不検出の確率が小さい高精度スペクトラム利用率測定手法の確立、(2) (1)の測定手法に基づくスペクトラム利用率測定装置の開発と実証、(3) (2)の開発装置を用いて実験を行い、面的周波数利用状況の測定法およびホワイトスペースの推定法を明らかにする、の3つの課題を設定して研究を進めている。本年度は、研究計画に基づき、課題(1)(2)の検討を進めた。 課題(1)では、提案する周波数bin毎の受信電力の累積確率分布を用いたスペクトル利用率測定法の測定性能評価のため、Matlabによる計算機シミュレーション系を構築し、利用率測定性能に大きな影響を与える検出閾値の最適化を行うと共に、受信SNR、パケット長などのパラメータがスペクトル利用率測定性能に与える影響を評価した。その結果、FFTブロック長=256、周波数bin=1MHzの時、検出閾値の最適値は雑音電力+5dBであり、受信SNRの低下、パケット信号長の低下、測定サンプル数の減少、信号のDutyの減少に伴い誤差が大きくなることを明らかにした。また、受信SNRの低下により測定誤差が増大するが、これは設定閾値に依存することを明らかにした。この結果を電子情報通信学会ソフトウェア無線研究会技術報告および総合大会にて発表を行った。 課題(2)では、提案するスペクトル利用率測定法の実現性を明らかにするため、市販スペクトルアナライザとデータ収集制御・処理を行うPCから構成されるスペクトラム利用率測定装置を開発し、処理ソフトウェアを試作して、提案測定法の実現性を実験により明らかにした。この結果は、電子情報通信学会東京支部学生発表会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度研究計画では、課題(1)は、雑音の受信電力の平均値ではなく累積確率分布特性を基準として用い、受信信号の累積確率分布と比較することで、不検出と誤検出を大幅に低減するスペクトラム利用率測定法の特性評価をMatlab を用いた計算機シミュレーションで評価し、測定限界を明らかにすること、課題(2)では、市販ハンドヘルドスペクトラムアナライザを購入し、スペクトラム利用率測定装置の開発を行い、実験により、実現性を明らかにすることを計画していた。 課題(1)は、提案する周波数bin毎の受信電力の累積確率分布を用いたスペクトル利用率測定法の測定性能を評価するため、Matlabによる計算機シミュレーション系を構築し、各種測定パラメータが利用率の測定性能に与える影響を明らかにした。また、課題(2)では、市販ハンドヘルドスペクトラムアナライザを用いたスペクトラム利用率測定装置の開発を行い、実験により、実現性を明らかにした。これらの結果は、電子情報通信学会ソフトウェア無線研究会技術報告および総合大会、電子情報通信学会東京支部学生発表会にて発表を行った。以上のように、計画通りに目標を達成している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は以下の計画で研究を進める。 課題(1)では、提案するスペクトル利用率測定法の測定性能を評価するための計算機シミュレーション系を構築し、各種パラメータが利用率測定性能に与える影響を明らかにした。しかし、対象信号がOFDMのみであったため、シングルキャリア変調信号に関して評価を行う。また、受信SNRの低下により測定誤差が増大するが、これは設定閾値に依存することが明らかとなったため、低SNRで測定誤差を軽減する手法を検討し、測定性能の改善を図る。 課題(2)では、市販スペクトルアナライザとPCから構成されるスペクトラム利用率測定装置を開発し、処理ソフトウェアを試作して、提案測定法の実現性を実験により明らかにした。しかし、測定性能に関しては、実験結果とシミュレーション結果にやや乖離がみられた。これは、購入した測定器が掃引型スペクトラムアナライザであり、パラメータがシミュレーションと同一でないためと考えられ、測定パラメータの最適化により性能向上を図る。また、課題(1)で検討する測定誤差軽減手法をソフトウェア実装し、測定性能改善効果を確認する。なお、開発装置における測定に要する時間を評価したところ、測定誤差を小さくするには1000サンプル以上の測定データが必要であることが明らかになったため、対数周期アンテナとアンテナローテータを用いる構成を変更し、TVホワイトスペースに関してはTV帯用無指向性アンテナ、他の周波数帯ではコニカルアンテナ+増幅器による方法を検討する。 課題(3)では、車載の測定系を整備し、今年度内に大学構内および構外で予備測定実験を実施する。そのうえで、取得した離散データから2次元スプライン補間などにより面的に補間することで、面的な周波数利用状況を推定する手法を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していた物品購入について、安価に済んだため。 次年度の実験用消耗品に使用する。
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