本研究は (1)高精度スペクトラム利用率測定手法の確立、(2) スペクトラム利用率測定装置の開発と実証、(3)面的周波数利用状況の測定法およびホワイトスペースの推定法の確立、の3課題を設定している。当初計画では、本年度は、課題(3)を実施予定であったが、実験により測定性能劣化の改善が必要となったため、課題(1)(2)の検討を優先した。 課題(1)では、提案スペクトル利用率測定法における雑音不確定性による測定性能劣化を改善する手法を提案し、その有効性を確認した。26年度に提案した雑音の累積分布を基準として受信信号の雑音部分の累積分布との二乗誤差を最小とするスペクトル占有率推定法では、雑音電力の平均値変動が測定誤差の原因となことがわかった。そこで、雑音の占有率と平均電力を同時推定する手法を考案し、計算機シミュレーションにより測定可能な受信SNRは維持しつつ、雑音平均電力の不確定性が1dBでも、測定性能劣化がないことを示した。また、提案手法を応用したパケット信号のSNR推定法を提案し、実現性を示した。 課題(2)では、課題(1)で提案したスペクトル占有率測定法の実現性を明らかにするため、スペクトラム利用率測定装置と組み合わせて使用する処理ソフトウェアを開発し、実験により、提案測定法による測定性能改善効果、AWGNチャネル、フェージングチャネルにおける測定性能を明らかにした。 以上の成果は、電子情報通信学会ソフトウェア無線研究会技術報告および総合大会、ソサイエティ大会、国際会議WPMC2015、EW2016にて発表を行った。なお、課題(1)(2)を優先して検討を進めたため、課題(3)は、今後の課題とした。
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