昨今無線電力伝送技術が着目され,これまで以上にMHz帯における無線機器の使用が見込まれる.このため,MHz帯において機器が発する電磁界レベルが電波防護指針の規準値を満足することを確認するための測定法の開発が必要となっている.本研究では,MHz帯において比吸収率(SAR)標準測定を実現するために必要となる液剤中で動作するプローブ較正に関して基本的な検討を目的とし,(1) 基準アンテナとして液剤中で動作するシールデッドループアンテナ(SLA)の試作,(2) 近傍界領域での利得測定系の構築,基準アンテナの近傍界利得の測定,(3) 基準アンテナの電界・磁界強度の距離特性の関数化について検討した.
平成27年度は,6.78MHzにおけるSLAについて,次の項目について検討を行った.6.78MHzにおいて液剤中で動作するシールデッドループアンテナを試作し,ループ長により近傍界利得の傾きが変化することを確認した.(2) 平成26年度の数値シミュレーション結果と測定結果が異なったため,ループ被膜誘電体の吸水性を変化させるシミュレーションを行い,皮脂チューブを用いた被膜の場合,被膜の誘電体の存在を無視することで数値シミュレーションと測定結果が概ね一致することを確認した.(3) 6.78MHzにおいても折り返しループ構造を導入することにより,ループ面積が大きくならない基準アンテナを実現できることを確認した.
研究全体を通して,MHz帯において,基準アンテナであるSLAの近傍界利得の距離特性が一定となるようにSLAの大きさを適切に選択することにより,SAR評価液剤内でプローブ較正が可能であることを数値シミュレーション等により明らかにした.
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