26年度までに得られた成果に基づいて,実際のシステムにより近い条件でセンサ協調ビーム形成による消費電力改善効果の評価を行った.ここでは,センサにおける情報信号送信時の消費電力に加えて,受信時の消費電力,及び制御信号の送受信時の消費電力も含めて評価を行った. 評価では,まず,再送率と消費電力の関係を数式化した.次に,センサ数と送信電力制御量に応じて再送率を計算機シミュレーションにより算出した.そして,算出した再送率を用いて消費電力低減量を計算した. 評価結果から,送信時と受信時の消費電力の比により消費電力低減効果が変わることが分かった.送信と受信の消費電力比が1:1の場合,ビーム形成に用いる協調センサ数が3及び5の場合,ビーム形成を行わない場合と比較して消費電力を30%低減できることを明らかにした.また,受信時の消費電力を抑えることにより消費電力低減効果を大きくすることができ,送信と受信の消費電力比が10:1の場合,協調センサ数を3とすると,消費電力低減効果は50%になることを明らかにした.また,協調センサ数を増やし5とすることができれば,消費電力低減効果はさらに大きくなり,ビーム形成を行わない場合と比較して57%低減できることを明らかにした. 以上の結果から,より実際のシステムに近い条件で評価した場合においても協調ビーム形成を行うことにより消費電力低減効果が得られることを明らかにした.
|