研究課題/領域番号 |
25420375
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
宇戸 寿幸 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (90380261)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 電子透かし / 三次元メッシュ / 複素信号処理 / コンテンツ保護 |
研究実績の概要 |
三次元メッシュモデルを対象としたコンテンツ保護技術の性能向上・機能強化を目的として、通信理論および信号処理論に着目した電子透かし技術について研究し、その応用技術を開発した。本研究の目的は、音声や静止画像、動画像と比べて製作コストが高く、著作権保護の要求が厳しい三次元画像に活用できる要素技術を確立することである。この目的を達成するために、本年度は通信理論における複素拡散符号ならびに信号処理論におけるハイパスフィルタを用いた電子透かし技術の研究に取り組んだ。 本年度の主な成果は次の通りである。1. 複素スミア変換と複素ウェーブレット変換を組み合わせた電子透かし法の研究開発:無線通信で多用される拡散符号を研究し、優れた性質を有する拡散符号を生成する複素スミア変換ならびに優れた周波数分割能を有する複素ウェーブレット変換を採用することにより、ロバスト性の点で従来法を上回ることが可能であることを明らかにした。その研究内容をまとめた論文を国際会議において発表した。2. 高域通過フィルタを用いた画像電子透かし法の研究開発:周波数領域での画像のエネルギー分布を分析し、高い周波数帯域の署名情報検出することにより、画質および検出性能を改善できることを明らかにした。その研究内容をまとめた論文を国際会議において発表した。 上記の2つの成果はこれまでに提案されている他の電子透かし法にも適用可能な知見であり、これらの知見を活用することにより数多くの電子透かし法の性能を向上させることができる。これらの成果以外にも、三次元メッシュモデルへの埋め込み情報量を増大するために領域分割を用いた電子透かし法を開発し、国内会議において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の具体的な目標は、以下の3項目を明らかにすることである。 (i)拡散符号に基づく透かし埋め込み手法・検出手法 (ii)時間周波数解析に基づく埋め込み情報量増大手法 (iii)統計的手法に基づくブラインド型検出手法 現在までは、主として項目(i)および項目(ii)の研究開発に取り組んだ。まず、項目(i)に関して、複素数値を持つ多相直交系列に基づく電子透かし埋め込み法を研究対象として、複素平面上で最適な透かし情報を理論的に導出した。また、高い周波数分解能を有する複素ウェーブレット変換を組み合わせることにより、透かし情報の検出率をさらに向上できることを計算機シミュレーションにより実証した。次に、これらの研究成果を踏まえ、項目(ii)に関して、時間周波数解析手法であるウェーブレット変換を用いた三次元メッシュモデル電子透かし法を開発した。また、三次元メッシュモデルに対してストライプ形状分割を適用することにより、埋め込み情報量を増大できることを計算機シミュレーションにより実証した。 以上より、3項目中の2項目については研究開発を推進し、その成果が出ている。そのため、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
前項で記載した研究目標3項目のうち、項目(i)および項目(ii)の研究開発は既に進めているが、これまでに明らかにしている点以外に望ましい拡散符号や時間周波数解析法が考えられるため、継続して研究を推進する。特に、未固定のパラメーター値を最適化することにより、署名情報を埋め込む・検出する性能の向上を図りたい。一方、項目(iii)に関しては、これまで余り着手していないので、今後集中的に研究に取り組む。 具体的な計画として、項目(i)の研究で得られた拡散符号の特性を踏まえて、署名検出過程においてベイズ推定を低演算量で実現する検出方式を考案することにより項目(iii)の研究を遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の使用額は計画通りであったが、前年度からの繰越金が残っており、学会と授業の日程重複などにより繰越金全てを使用できなかったため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究に必要となる書籍およびコンピュータ、ソフトウェアを次年度購入する計画を進めている。
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