複数のアンテナ素子を有するMIMO(Multi-Input Multi-Output)無線通信では、基地局装置の小型・低消費電力化が重要となる。本研究課題では、MIMO無線通信において、基地局装置の小型・低消費電力化のための適応信号処理技術を開発することを目的とする。本年度は、本研究課題である基地局装置の小型・低消費電力化のための適応信号処理技術について、前年度に考案した手法の特性解析を進めるとともに方式の改良を行った。具体的には、送信機と受信機の双方において伝搬路情報を利用するMIMO空間分割多重システムにおいてアンテナ素子送信ピーク出力を軽減する技術、MIMO受信機において受信回路規模を軽減する信号処理技術およびA/D変換技術に関して更なる検討評価を行った。 線形プリコーディングを行うMIMOシステムにおいて、アンテナ素子当たりの出力電力ピーク値の制約下における送信重み係数の制御手法について更に検討を行った。周波数分割複信(FDD) を仮定し、下り回線における伝搬路変化量を上り回線において周期的に帰還する方式を適用した。アンテナ毎の送信信号の正規化瞬時電力値および時変伝搬路における検討システムの伝送特性を評価し、その有効性を示した。また、前年度に提案したコンパレータヒステリシスを応用した低分解能A/D変換技術を用いる無線通信システムの更なる特性評価を行った。種々の変調方式を用いるシステムの受信機に提案A/D変換技術を適用氏、その受信特性を評価した。提案A/D変換技術と受信等化技術を併用することで特性を改善できることを示した。また、音声および映像等のマルチメディア情報を伝送する通信システムにおいて、圧縮センシングに基づくA/D変換技術について検討した。A/D変換器の量子化ビット数が有限である場合に適した方式を示し、シミュレーション評価に基づき有効性を示した。
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