ネットワーク上の全ての端末に同じ情報を送信する放送型情報配送方式は,無線LAN端末を用いたアドホックネットワーク等で使われている.一般的な放送型情報配送方式では,パケットを受信した全ての端末が通信可能な範囲へ中継転送を行う"フラッディング"と呼ばれる手法が用いられている.平成27年度では,感染症モデルに基づいて,確率的に転送を行う確率的フラッディングにおける情報の拡散率(メッセージ到達率)に関して,前年度までに構築したモデルの精密化を行い,ホップ数と情報到達率の関係を計算機シミュレーションにより評価した.MAC層プロトコルとして,無線LANあるいはセンサーネットワーク等において広く利用されているCSMA/CAによる影響(受信端末におけるパケット衝突によって,送受信端末間の距離が送信距離以下であっても正しく受信できないなど)を考慮できるようにした.今年度は,前年度まではホップ数を情報到達率の関係に着目していたが,これを情報が発信端末から送信されてからの経過時間と情報到達率の関係に変換できるよう,ホップ数と経過時間の関係に関する検討を行った.ネットワークシミュレータQualNetを用いた検証結果より,各中継端末におけるランダムなバックオフ時間の影響が非常に大きく,これにより経過時間の分散が増大し,ホップ数と経過時間の関連の評価に多大なる影響を及ぼすことを明らかにした.
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