研究課題/領域番号 |
25420381
|
研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
長 敬三 千葉工業大学, 工学部, 教授 (00633356)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 移動通信 / 基地局アンテナ / 周波数共用 |
研究実績の概要 |
本研究では従来の周波数帯に加えて3.5GHz帯でも動作可能な移動通信基地局用のセクタアンテナの実現手法として,3.5GHz帯用アンテナに,周波数選択性反射板(FSR)にダイポールアンテナを配置したFSR付ダイポールアンテナを適用する構成について検討している.H26年度はH25年度の検討結果を踏まえ,FSRを構成する素子として帯状ループ素子,構成自由度の大きいガングバスタ(GB)素子,クロスダイポール素子を小型化したエルサレムクロス(JC)素子に着目し,セクタアンテナ実現に適した素子構成の比較検討を行った.その結果,半値角が50~70度程度のセクタ指向性アンテナを実現する場合,どの構成を用いてもほぼ同様のセクタ指向性を実現できるが,GB素子はその配置自由度が一番大きく,調整がしやすいことがわかった.一方半値角が70度以上の半値角のアンテナの場合,特に帯状ループ素子を用いると半値角が周波数に対して大きく変動し,GB素子が配置自由度が大きく,周波数変動を最も下げられることがわかった.また各構成における電流分布を解析し,帯状ループ素子で半値角変動が大きくなる要因を分析した. また解析結果の妥当性を確認するため,正方形帯状ループで構成したFSR付ダイポールアンテナを試作し測定評価を行った.その結果,指向性の測定結果と解析結果はよく一致し,解析結果の妥当性を確認できた. 基地局アンテナのマルチバンド化に向けた検討として,1.5GHz~2.6GHz程度で動作する反射板付ダイポールアンテナの前面にFSRを配置したときの,反射板付ダイポールアンテナの指向性への影響について検討した.その結果,周波数が2GHz以下ではFSRによる指向性の影響はあまり見られないが,2GHzより大きくなると,反射板付ダイポールアンテナの指向性が歪むことを確認した.また指向性への影響は,GB素子を用い,素子配置間隔を狭くすると,指向性の歪みは低減することを確認した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FSR付反射板ダイポールアンテナ構成を用いてセクタアンテナを実現する上で,セクタ指向性の実現に適したFSR素子の明確化についての検討はほぼ完了した.実験による解析結果の妥当性の検証も確認するとともに,マルチバンド化に向けた検討も既に着手して基礎データを取得しつつあり,当初の目標通り着実に検討を進めている.本研究に関し,日本電信電話株式会社(NTT)から共同研究の依頼があり,実用的な観点も含め検討を進めることとなった.企業との共同研究での推進に関しても当初予定通りである.検討結果の論文化がやや遅れ気味であるが,H27年度にレター,論文の投稿を予定している.
|
今後の研究の推進方策 |
H27年度は,マルチバンドアンテナ実現に向けた共用検討を中心に検討を進める.H26年度の検討で,FSRを既存のアンテナに近接して配置した場合,2GHz以上の周波数で指向性が歪むことが確認されている.また一般に用いられているフィルタの急峻化技術である多段化の概念をそのまま本アンテナに適用すると,既存のアンテナの指向性の歪みが大きく,多段構成は本アンテナには適さないことも確認した.FSR素子形状や配置が既存のアンテナの指向性に影響することも確認しており,今後は素子形状の詳細検討や素子へのL,Cの装荷構成なども考慮しながらマルチバンド化の検討を進める.またNTTと共同で実用化に向けた検討も進めていく.さらに今までの成果の論文化,発表も並行して進める.
|
次年度使用額が生じた理由 |
残金は約17,000円であり,ほぼ予定通りの支出である.
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度は論文投稿を予定中であり,論文投稿費で支出するとともに,電磁界解析シミュレータの使用費用および出張旅費,実験用消耗品に使用予定である.
|