本研究では従来の周波数帯に加えて3.5GHz帯でも動作可能な移動通信基地局用のセクタアンテナの実現手法として,3.5GHz帯用アンテナに,周波数選択性反射板(FSR)にダイポールアンテナを配置したFSR付ダイポールアンテナを,適用する構成について検討している.本年度は昨年度からの継続として,2GHz帯と共用する構造における相互影響を軽減可能な垂直偏波構成FSR付ダイポールアンテナのFSR形状の検討,FSR付ダイポールアンテナの半値角を調整可能な構成の検討,偏波共用化の実現に向け水平偏波構成のFSR付ダイポールアンテナについての検討を行った. 相互影響を軽減可能なFSR形状としては,FSRの両端の素子のみ前方に配置する構成を提案した.その結果2GHz帯及び3.5GHz帯(3.4~3.6GHz)における半値角変動を5度以内にできる配置位置が存在することを明らかにした. 半値角を調整可能な構成として,FSRをコーナリフレクタ構造としたアンテナ構成を提案した.本アンテナのコーナ角に対する半値角の特性は,通常の金属板を用いたコーナリフレクタアンテナとほぼ同等であり,コーナ角により半値角を35°~120°まで変化できることを明らかにした.一方FB比は従来のコーナリフレクタアンテナより劣化し,FSR素子の配置および間隔に依存することを示した. 水平偏波のFSR付ダイポールアンテナ構成として,横向きのGang Buster素子を水平方向に一列配置した構成を検討し,半値角70度程度のセクタ放射指向性を実現できることを確認した.しかし2GHz帯アンテナと一体化すると半値角の周波数変動が大きくなることが確認された.電界分布の詳細解析より1列ではFSRの大きさが十分でなく後方放射する電界があることが確認されたため, FSR 素子を互い違いに配列する構成を提案し,後方反射板による影響が一列配列構成よりも改善されることを示した.
|