研究課題
基盤研究(C)
本研究課題では、画像の自己相似性を用いた単一画像の超解像技術の新しい方法を提案し、そのメリットデメリットを確認し、応用に応じた利用方法を示す。自己相似性とは信号のどの部分(パッチ)も、細部を拡大すると全体と同じ形状を示す性質を言う。画像のあるパッチは、同じ画像の他のパッチとも類似しており、拡大縮小や回転反転等の変換画像に対しても同様の性質を有している。平成25年度はこの性質を利用した2つの超解像手法について検討し、十分な成果が得られた。1) 非局所平均(NLM)による超解像:画像の強力な雑音除去のために考案されたNLMを利用した新しい超解像手法を提案し、十分な成果が得られた。入力画像に対して、平滑化された画像と、線形拡大した画像を用意し、これを平滑化画像のNLMで表現する。この関係が得られた後、平滑化画像の代わりに入力画像を用いることにより、より鮮明なエッジを表現し、テクスチャも鮮明に表現できた。2) 学習を用いないL2近似による超解像:従来法では膨大な低解像度及び高解像度画像ペアを用意し、スパース性(L1近似)によりそれぞれの辞書を作成する必要があった。これに対して画像をダウンサンプリングして低解像度画像を作成し、これと原画像の空間的に同じ位置のパッチをランダムに選びこれを辞書とする。低解像度辞書を使って原画像をL2近似し、その係数と高解像度辞書を用いて高解像度画像が得られる。本手法により超解像性能を同等に保ちつつ、辞書作成も必要なく、L1の代わりにL2近似を用いることにより解析的に解くことができ、計算時間を飛躍的に短縮できた。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の予定では学習を用いないL2近似による超解像技術の研究を1年目の目標としていたが、順調に成果が得られた。この過程で辞書を作成すること無く、超解像を実現することを検討し、当初の計画に無かったNLMによる超解像技術の研究に着手した。手法的には非常に簡単であるが、高解像度画像と低解像度画像の自己相似性の取得に苦戦したが、これを克服し、より簡単に高性能な超解像度技術を獲得できた。但しブロックマッチングが必要なため計算時間がかかることが難点である。今後はこの問題も含めて様々な手法を検討したい。
平成26年度は、昨年度の手法を更に改良することと、より現実的な超解像手法を確立するための非線形処理を検討する予定である。1)自己相似、自己合同性を用いた超解像:これまでは自己相似、すなわち異なるスケール間での相似性を利用して超解像を行った。しかし画像自身は多くの類似した部分を含んでおり、これを自己合同性と呼ぶこととし、これを利用してより高性能な超解像を実現したい。雑音除去の手法として近年注目されている方法にBM3Dがある。これは画像内の類似したバッチを累積してキューブを作成し、これにウイナーフィルタ等の古典的な雑音除去手法を適用すると、これまでの常識では考えられないような雑音除去が可能となり、注目されている。この手法の鍵は画像内の類似した部分を累積する、すなわち画像の自己合同性の利用である。この技術に着目し、昨年度得られた自己相似性に基づく超解像にBM3Dを適用することにより、より高性能な超解像が実現できる可能性がある。2)ショックフィルタを利用した超解像:これまでの手法の問題は計算量が多く、実時間処理を考えると限界がある。そこでエッジの傾きを鋭くすることができるショックフィルタを使った超解像を検討する。ショックフィルタ繰り返し演算の必要な非線形処理であるが、高速に実現できる。但し繰り返しを行うとテクスチャ成分が除去され、のっぺりした画像になる。そこでこのテクスチャをいかに保存するかがこの技術の鍵である。解決法は検討しており、試行錯誤しながら実時間処理可能な超解像技術を開発する。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
IEICE Trans. Fundamentals
巻: vol. E96-A , no. 8 ページ: 1685-1694