研究課題/領域番号 |
25420389
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
前原 文明 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80329101)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 移動通信 / シングルキャリヤ周波数領域等化 / 時間選択性フェージング / 判定帰還型伝搬路推定 / 雑音強調 |
研究概要 |
本研究課題では,高速無線通信を実現する際に問題となる周波数選択性フェージングを完全に抑圧でき,OFDMよりも非線形ひずみの影響が小さいことから,バックオフの小さい電力増幅器の適用が可能なシングルキャリヤ周波数領域等化(SC-FDE)方式を採り上げ,周波数及び時間選択性フェージングといった高速移動通信の2つの主課題を同時に克服できるSC-FDE復調方式の確立を目指すものである. 本年度は,研究の第一段階として,時間選択性フェージング環境がSC-FDE方式に与える影響を検証すべく,当該環境下における伝送特性の評価を行った.具体的には,正規化最大ドップラー周波数を変化させたときのビット誤り率特性を把握するとともに,時間選択性フェージング対策として,OFDM方式に対してよく用いられる判定帰還型伝搬路推定法(DFCE)を採り上げ,それを適用したときのビット誤り率特性を,DFCEを適用しない場合の特性を比較対象として評価を行った.特性評価の結果,正規化ドップラー周波数が大きくなるにつれて,フレームの先頭に配置されたパイロットシンボルにより得られた伝搬路値とデータシンボルが実際に受ける伝搬路値との差異が大きくなることから,ビット誤り率特性が大幅に劣化することが明らかとなった.また,SC-FDE方式に対して,DFCEを適用すると,周波数スペクトルに大きな偏差を有するといったOFDM方式とは全く異なる性質に起因して,特に,小さな振幅のサブチャネルにおいて,雑音強調の影響が深刻となることから,DFCEを適用しない場合よりもビット誤り率特性が劣化し,DFCEの適用効果が得られないことがわかった. 今後は,雑音強調による伝送特性劣化の問題を克服すべく,各データシンボルにおいて比較的振幅の大きいサブチャネルを選択・抽出し,それらのサブチャネルに対してDFCEを適用する方式の検討を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は,研究実績報告に記載した通り,現在まで研究計画調書に記載した通りに進捗しており,概ね順調に進展している.本年度は,本研究課題を進めていく上で最も基盤となる,SC-FDE方式に対して判定帰還型伝搬路推定法を適用した際の振る舞いを精緻に模擬できる信号処理シミュレータを構築できたことが最大の成果であり,今後,技術提案を含めた検討を加速させる上で大きな意義を有するものと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の検討により明らかとなった,SC-FDE方式における判定帰還型伝搬路推定法(DFCE)適用時の問題点を克服する技術提案を行うとともに,その有効性を計算機シミュレーションにより評価する.具体的には,以下の項目について研究を進める. (1) 雑音強調抑圧を可能とするSC-FDE用DFCEの検討 SC-FDE方式に対してDFCEを適用した場合に問題となる雑音強調を抑圧すべく,雑音強調の影響の小さいサブチャネルを抽出するとともに,それらのサブチャネルのみに対してDFCEを行う方式を提案する.具体的には,SC信号により構成された各データシンボルの周波数スペクトルに対して,一定の閾値を設定し,閾値を超えるサブチャネルを信頼性の高いサブチャネルとみなし,それらのサブチャネルに対してDFCEを施す方式を提案する.なお,提案方式の有効性は,本年度得られたBER特性あるいはPER特性を比較対象とすることにより評価する. (2) 伝搬路への時間追従性向上を目的としたSC-FDE用DFCE (1)の検討により,雑音強調は抑圧できるものの,DFCEの対象となるサブチャネル数が減少することから,DFCEの伝搬路への追従性が低下することが懸念される.そこで,雑音強調の抑圧と伝搬路の追従性の保持の両面を担保する,SC-FDE方式に適した伝搬路推定法を検討する.具体的には,移動速度が既知であることを前提に,雑音と時間選択性フェージングの影響を理論的に把握するとともに,支配的となる影響に適した忘却係数によりDFCEを行うものである.また,その有効性は,BER特性あるいはPER特性の観点から,全サブチャネルを用いるDFCE及び(1)のサブチャネルを選択するDFCEを比較対象とすることより評価する.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度,研究経費として想定していた,消耗品(プリンタトナーの一部)及びその他(会議費)の支出について,それぞれ,プリンタトナーの切り替えタイミングが年度内にこなかったこと及び本研究課題を検討する技術会合を次年度に延期したことから,次年度使用額が生じている. 次年度使用額は,次年度の研究経費の一部として,消耗品(プリンタトナーの一部)及びその他(会議費)に支出する予定である.
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