本研究では,高速に電波環境(伝送路)が変動する条件の下,周波数資源を有効利用して大容量化するために,伝送路変動を予測し,かつ,時間軸と空間軸を活用した差動時空符号化に新たに周波数軸を協調させる予測形差動時空周波数符号化の研究を実施している.本研究成果を活用することで,従来より基地局のカバーエリアを3倍以上とし,サービスに必要な基地局数は1/10以下に削減,単位周波数当たりの送信ビット数は2~4倍にすることが可能で,周波数資源を2~4倍有効活用することができる.これらの効果から,同一周波数で同報通信を実現する移動体通信システムにおいて,システムを簡単化でき,収容ユーザ数や送信データ量を増大することができる. 本研究の平成27年度の成果は,1. 空間多重のための差動時空符号化,2. SC/MC融合伝送技術なる技術を提案し,シングルキャリア (SC) 伝送方式のみでなくマルチキャリア (MC) 伝送方式にて,正規化最大ドップラー周波数fDTが3%の環境下で,周波数利用効率4bps/Hzを実現したことである. 上記1.に関しては,伝送路予測を適用した空間多重方式を提案し,本手法が4bps/Hzの条件下で,fDTが3%を超える環境において有効であること明らかにした.上記2.に関しては,26年度に提案した多重シングルキャリア伝送方式が,SC伝送方式とMC伝送方式の融合方式として有効であることを確認した.加えて27年度は最終年度として,3年間の研究成果報告も含めて,2件の査読付き論文採択,1件の投稿中査読付き論文,1件の国際会議発表,6件の研究会発表という成果を達成した.
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