研究課題/領域番号 |
25420398
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
大坊 真洋 岩手大学, 工学部, 准教授 (20344616)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ベクトルポテンシャル / コイル / トランス / スピン / 原子磁力計 |
研究概要 |
非常に長いソレノイドコイルの外側には磁場は存在しないが、ベクトルポテンシャルは存在する。ベクトルポテンシャルのみを有効に発生させるために、細くフレキシブルなソレノイドコイルを、さらにソレノイド状に円筒へ巻いた二重コイル(ベクトルポテンシャルコイル)を作成した。各巻線からのベクトルポテンシャルの重ね合わせにより、円筒内部には直線状のベクトルポテンシャルが存在していると考えられる。実際のコイルは巻線の太さをピッチとして捻じれながら電流が前方にグローバルに流れるため、通常のコイルと同様に磁場も重畳するが、その磁場をキャンセルする同軸のリターンパスを設けたコイル構造とした。 円筒内部の漏洩磁場を、コイルおよびホールセンサーを用いて評価したところ、後述する二次側の信号に影響を及ぼす大きさの磁場は観測されなかった。 次に、円筒内部に二次コイルとして導体を挿入し、ベクトルポテンシャルトランスを構成した。直線状の二次コイルには、ベクトルポテンシャルの時間微分に比例した二次電圧が発生し、その大きさは導出した理論式とよく一致した。また、二次電圧の大きさは、二次コイルの形状に依存せず、ベクトルポテンシャルとの内積の線積分に等しい電圧となった。例えば、二次コイルの形状を、単純な直線状とした場合も、ソレノイドコイルとした場合でも、二次電圧は同じであった。また、二次コイルを往復させた場合は、二次電圧がゼロになった。 さらに、二次コイルを計測周波数の表皮深さよりも十分に厚い金属で遮蔽した場合であっても、二次コイルには遮蔽しない場合と同じ大きさの電圧が発生した。すなわち、直線上のベクトルは、シールドを通り抜けて二次コイルに作用できることが明らかになった。 これらから、我々は無磁場の環境下で信号やエネルギーの非接触伝達を可能とする機器の基本原理を生み出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度の計画の当初目標は、空間的に平行なベクトルポテンシャルを生成する各種二重コイルを作製することであった。項目毎に達成度を説明する。 (1)非常に長くフレキシブルなマイクロカールコードを作製する。中心に戻り電流用の中心線を設け、磁場をキャンセルできる構造とする。太さやピッチの異なる3種類のマイクロカールコードを作製した。最も長いものは長さ10 m、太さは4.4 mmである。中心には同軸で戻り線路を設けており、外部磁場は2 Aの電流を流した場合でも、20 nT以下であった。(達成度100%) (2) マイクロカールコードを用いて、二重コイルの各種構造を作製する。まず、基本形がソレノイド型であり、それを対抗させて中心部からのアクセスができるヘルムホルツ型へと発展させる。また、より均一なベクトルポテンシャルを生成するために円形型も作製する。さらにトロイダル型も作製する。ソレノイド型、円形型(球型)、トロイダル型を作製した。ヘルムホルツ型については、作製したが機能しなかった。我々の実験結果によると、ゲージに任意性があるベクトルポテンシャルは、磁束のように発散無し(連続)の性質を持たず一方のソレノイド端部で消えているように振る舞っている。この部分は磁場とベクトルポテンシャルの大きな違いである。(達成度100%) (3) ベクトルポテンシャルの分布をシミュレーションで解析する。中心軸上での解析はできたが、他の任意部には至っていない。(達成度30%)
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今後の研究の推進方策 |
(1) 超伝導二次コイルを有するベクトルポテンシャルトランス 二次コイルをノーマルメタルではなく、ベクトルポテンシャルにした場合の、伝達特性を調べる。ベクトルポテンシャルはミクロ的には超伝導電流の位相を変化させるが、ノーマルメタルとの接点を持つ現実的な状況で、どのような振る舞いをするか測定する。 (2) トロイダル型のベクトルポテンシャルトランス トロイダル型のベクトルポテンシャルでは、ソレノイド型と比較して端部の不連続性や空間分布の不均一性が解消できる。トロイダル型のベクトルポテンシャルトランスの伝達特性を調べる。さらにトロイダルの中央部では、トロイダルの内部を周回するベクトルポテンシャルがあるが、磁場が発生しているか否かを調べる。 (3) 直流のベクトルポテンシャルが物理系に及ぼす影響の探索 交流のベクトルポテンシャルは、電界を発生するが、直流のベクトルポテンシャルに起因する現象がマクロ系で表出することができないか精密測定を行う。 (4) 導電性流体用の電磁推進ポンプ 二重コイルによるベクトルポテンシャルは、直線的であるので、直線的な電界を発生させることができ、すなわち直線的な電流を電極の接触無しに発生させることができる。この電流の磁界のローレンツ力を利用して、電解質中でも電蝕の心配のない電磁ポンプの基本検証装置を試作する。
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