研究課題/領域番号 |
25420399
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大橋 雄二 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (50396462)
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研究分担者 |
唐木 智明 富山県立大学, 工学部, 准教授 (10254236)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 精密超音波計測 / ランガサイト系単結晶 / 音響関連物理定数 / 温度係数 / 圧電デバイス |
研究実績の概要 |
ランガサイト系単結晶は、高温環境下で動作する温度・圧力センサーデバイスや、次世代の情報通信用高安定発振デバイスの材料として期待されている。デバイス設計には高精度な音響関連物理定数とその温度係数が不可欠である。本研究では、従来の計測法における問題点を明確化すると同時に、最適な計測法および定数決定法を構築し、新しい計測標準として確立することを目的とする。また、高精度超音波計測技術による評価を通して、様々な置換型結晶があるランガサイト系単結晶の中で最も優れた特性を有する材料を探索する。 今年度は、昨年度構築した温度係数測定装置および共振法では直接励振が不可能なZ軸伝搬縦波・横波および回転Y軸伝搬縦波をパルスエコー法での測定に置き換えた定数決定手順を用いてCTGS単結晶の温度係数を測定した。まず、超音波マイクロスペクトロスコピー(UMS)技術を用いて室温近傍のバルク波音速を測定し、それをもとに音響関連物理定数を決定した。また、パルスエコー法と共振法を併用して-30~80℃の温度範囲で各基板のバルク波音速の温度依存性を計測し、音響関連物理定数の温度係数を求めた。特にパルスエコー法では、UMS技術により測定した室温近傍のバルク波音速の精密な温度依存性の結果と比較して、1次の温度係数において既に異なる結果が現れるものが多かったのに対し、共振法ではほぼUMS技術の結果と一致した。この原因としてパルスエコー法では音波の励振源となる36°Y-cut やX-cut LiNbO3板を試料に貼付ける必要があるが、その接着剤の厚みの制御や接着剤自身の温度特性の影響が考慮されていないためであることが考えられる。この点を考慮して、パルスエコー法でのバルク波音速の温度依存性に対し室温での1次の温度係数をUMS技術でのそれに一致するように校正することで温度係数の大幅なずれを補正できる手法を実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた研究内容を実行でき、昨年度構築した、高精度な定数・温度係数測定法を実際の測定を通して検証し、最終年度に向けての改良点を見出すことができ、本計測法の確立の準備が済んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度、開発した手法により実際に温度係数測定を通して検証を行なったところ明らかとなったパルスエコー法における接着層の厚み制御と温度依存性の影響の問題について解決策を検討する。接着剤となる紫外線硬化材のバルク体を作製し、その縦波音速および横波音速の温度係数の測定を試みる。また接着層の厚み計測法として接着前の試料厚さおよび貼付け基板厚さを予め計測しておき、接着後の厚さから差し引くことで接着層の厚さを求める手法を試みる。以上から、パルスエコー法測定における接着層内でのパルス遅延時間の温度依存性を算出、測定結果の補正を行い、UMS技術の測定結果と比較してその良否を判定する。 LGS、LTGA、CNGSなどの他のランガサイト系単結晶に対しても本手法を適用し、本手法の妥当性を検証する。定数・温度係数が確定した材料に対しては、振動子や弾性表面波フィルターなどのデバイスとして最適なカット角および伝搬方向を計算により求め、どの材料がより適しているかを比較して行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に実施したことにより発生した未使用額分である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、平成27年度請求額と合わせて、平成27年度の研究遂行に使用する予定である。
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