研究課題/領域番号 |
25420404
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
森澤 正之 山梨大学, 総合研究部, 教授 (30220049)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | エレクトロスプレー / 膨潤性ポリマ / POFセンサ / プラスチック光ファイバ |
研究実績の概要 |
平成26年度は,前年度に引き続き、「(1) ESD法によるポリマ薄膜作成」を行うと共に、「(2) ESD法による膨潤性ポリマクラッド型POFガスセンサの作成と基本的特性評価」に取りかかり始め、ガスセンサとしての基本的特性評価を行うことを目指した。 【ESD法によるポリマ薄膜作成】 ESD法は帯電による溶液液滴内部の反発力を利用して,ナノオーダーの液滴を生成する方法である.そのため,基板に導電性がないと基板が帯電してしまい,薄膜形成に支障がある.特にポリマ基板の場合は,高電界中に置くと強く帯電するため,エレクトロスプレーが帯電基板との静電気反発力で基板を避けてしまう.それを避けるために,適切な加電電圧,キャピラリーと対向電極間距離などのパラメータの探索を行った.また,対向電極を基板と同じ誘電率を持つシートで覆うことにより,エレクトロスプレーが基板を避けることを防ぐことを試みた.これらの取り組みにより,基板へのポリマ薄膜製成は改善されてはいるが,来年度もさらに検討を加える必要がある. 【ESD法による膨潤性ポリマクラッド型POFガスセンサの作成と基本的特性評価】 上記の結果をもとに,直径0.5mmのプラスチック光ファイバ(POF)上に,ESD法による膨潤性ポリマクラッドのコーティングを試みた.形状が平板ではなく円筒形であるために,エレクトロスプレー液滴との静電気反発力が大きくコーティングが困難だった.そこで,POFコアに界面活性剤による処理を行い,帯電性を低くした後に製膜を行ったところ,POFセンサの作成が行えた.作成したPOFセンサのヘキサン飽和蒸気に対する応答を調べたところ,ディップコーティング法により作成されたPOFセンサにくらべて,2倍程度の感度を持つことが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画では,ESD製膜装置を作製すること、および、平板上のガラス基板またはポリマ基板にポリマの薄膜形成と最適な製膜条件の模索を行うことを目的としていた.ESD作成装置は,昨年度に作製した装置に改良を加えて,エレクトロスプレーの飛び方が均一になるようにすることができた.一方,ポリマ基板への膨潤性薄膜形成に関しては,静電気反発力が予想以上に大きく,特に膜厚が1μm以上の均一な薄膜形成が困難であり,現在検討を行っている.また,その遅れのために,本年度の計画であった,膨潤性ポリマに低屈折率ポリマであるPVDFを混合したブレンドポリマのESD製膜実験を行うことができなかった. しかしながら,来年度の計画であるPOFへのESD薄膜形成を前倒しで行い,ディップコーティング法によって作製されたPOFセンサより感度の良いセンサが作成可能であることを示すことができ,本提案法が有用であることを確認できた. 以上を鑑み,本年度の研究目的および計画はおおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き,帯電性の強いポリマ基板に対してESD法によるポリマ薄膜作成の方法を検討を行うと共に,ESD法による膨潤性ポリマクラッド型POFガスセンサの作成と基本的特性評価を継続する. 平板基板への膨潤性ポリマ薄膜の作成に関しては,キャピラリーと対向電極間の周囲に誘電体シートを設置することにより,エレクトロスプレーの散布状態をコントロールして,ポリマ基板にスプレーが当たるようにすることを試みる.この結果をもとに,POFの側面への膨潤性ポリマ薄膜の作製の改善を図る.また,本年度行ったPOFへのESD法による薄膜は,POFを固定して行ったが,本来ならばファイバ中心を軸にして回転させながらファイバ側面に膨潤性クラッドを堆積させる必要がある.そこでESD製膜装置に光ファイバ回転装置を作成して加える.さらに,本年度行えなかった低屈折率ポリマとのブレンドポリマによるESD薄膜の作製に取り組む. これらの装置を用いて膨潤性クラッド型POFを作成し,そのガスセンサとしての基本的特性を測定する.本年度はヘキサン飽和蒸気のみの応答を測定したが,次年度は,ガスセンサとしての基本的特性評価を行う.POFセンサの基本特性の測定は次のように行う.1.本年度用いた実験系を用いて,センサヘッドの感度,応答特性を測定する.2.アルコール蒸気やプロパンガスの濃度の調整は,真空にしたチャンバーに液相のアルコールから作成した飽和蒸気もしくはプロパンガスを窒素で希釈することによって行う.なお,基本的測定なので対象ガスは高い濃度で測定し,ディップコーティング法で作成したPOFセンサと比較検討を行う.3.クラッド層の厚さ,センサヘッドの直径,長さなどをパラメータとして感度,応答特性の測定を行う.4.POFの端面を研磨してD型ファイバとすることで,POFを回転すること無くクラッドポリマを堆積できる.このD型POFファイバを作製し,円筒ファイバとの比較を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の使用額は,ほぼ全額使用した.しかし,前年度からの繰り越しが60万円程度あったために,その額が次年度使用額として生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
本年度に予定していたESD製膜装置の2台目の作製が遅れたために,次年度にそれを行う.その予算として次年度繰越額を使用する.
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