我々はこれまでに,「光水面センシングシステム」の提案とその性能に関する検討を行っている.H26年度までに,水面及び水面近傍からの鏡面反射と拡散反射,また,護岸や橋脚などの構造物からの拡散反射を用いた水面センシング技術について報告している.特に,我々が提案する経路分離法における,CW光伝搬特性を明らかにしている.H27年度はおもに,パルス光を用いたセンシングに関する実験検討を行っている. まず,上記の経路分離法に,1経路多波長の光パルスを用いることにより,水面センシングの高速化・高性能化を図った実験検討を行った.経路分離法の光源として,増幅自然放出光(ASE光)のスペクトルスライスとパルス化により,3波長の無偏波・低コヒーレンス光を発生させた.上記の光源を用いた室内実験により,拡散反射光の受光ピークパワーに関し,高い値及び良好な時間安定性を実験確認した.また,受光パワー時間波形の水面状態依存性の明確化を行った.その結果,我々が提案する方法が,水面が波立った場合においても適用可能であることを明らかにした.また,光パルスのピークパワーが,パルス変調のパラメータである繰り返し周波数及びデューティに顕著に依存することを実験により明らかにした.送信光のピークパワーとして約54Wという高い値が得られた. 次に,散乱光受光型の光水面センシングシステムにおいて,光伝搬特性の実験検証を行った.湖の水を用いた室内実験により,水面が静かな場合および波立った場合のいずれにおいても,雑音レベルに比べ十分高い信号レベルが得られた.また,高出力ASE光源特性および受光パワーの散乱媒質依存性を実験により明らかにした.ASE光源を用いることで,SBSによる波形歪が生じないことを確認した.また,受光パワーは液体中の散乱体の濃度が高いほど高い値を示し,入力光パワーに対して線形な応答を示すことを確認した.
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