研究課題/領域番号 |
25420409
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
劉 傳軍 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 助教 (70599654)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 匂いセンサ / クラスターセンシング / 分子プロファイル識別 / 分子インプリント / 匂い吸着分離 / パターン認識 / 嗅覚 / バイオミメティック |
研究概要 |
本研究では、嗅覚の機構を模倣するバイオミメティックの視点から、匂い物質に対しての分子プロファイル認識および匂いクラスター識別を行い、ヒトの嗅覚認識に近いセンサシステムの開発を目的としている。匂い物質をクラスター分類に基づきセンシングするため、各クラスターの分子プロファイル特徴を選択的に識別できる認識材料の開発を、H25年度の主要任務とした。(1)クラスターAに所属する脂肪酸分子とポリアクリル酸(PAA)の強い水素結合特性を利用し、各脂肪酸テンプレート分子(プロピオン酸、ヘキサン酸、オクタン酸)を溶かしたPAAのエタノール溶液のキャスティング膜を作製した。GC/MS分析の結果から各膜のターゲット分子に対してのMIP効果を確認した。マルチQCMを用い、様々な単一および混合脂肪酸匂いのセンシングを行った。主成分分析法(PCA)とサポートベクターマシン法(SVM)を用いたパターン認識によりPAA-MIP材料の有用性を検証した。(2)アクリロニトリル(ACN)とアクリル酸(AA)を共重合し、コポリマーPoly(ACN-co-AA)の貧溶媒中での相分離特性を利用し、各脂肪酸のMIP吸着材料を作製した。GC/MSの評価によって、コポリマーの重合条件を検討した。モノマーACNとAAの比率が1対4の場合、コポリマーは最も高い選択性を示すことが分かった。(3)沈殿重合法によって、トリメチロールプロパントリメタクリラート(TRIM)が架橋されたポリメチルアクリル酸のMIPナノビーズ(粒径1μm)を作製した。非インプリントポリマービーズ(NIP)と比べて、ヘキサン酸(HA)のインプリントナノビーズ(HA-MIP)はHAの匂いに対し高い吸着量とセンシング感度を得られた。これらの結果から、MIPナノビーズ材料はより低い濃度の匂いを選択的に吸着できる、本研究の目的における最も有望な材料になると考えた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
匂い物質をクラスターセンシングするための分子プロファイル認識材料の開発について、三つのMIP材料を作製し、SPME-GC/MSの評価によって、脂肪酸匂いの分子プロファイル特徴に応じる選択的な吸着性を確認した。そのため、初期の目標はおおむね達成したと判断する。しかし、クラスターAに所属する匂い分子だけを検証したので、これらのMIP作製方法は、ほかのクラスターの匂い分子に対しての有効性が明確されていない点は今後の課題であり、その点では研究の達成度は不十分である。一方、マルチQCMのセンシングシステムを構築し、各匂いの応答結果からパターン認識を行い、本研究の最終目的とするクラスターセンシングに役に立つデータ解析方法を確立した。これは今年度に予定した以上の成果となっており、総合しておおむね順調に進展していると自己評価する。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度の脂肪酸MIP材料の作製の成果を踏まえて、ほかのクラスター(官能基、極性など)およびサブクラスター(分子サイズ、形状など)に属する匂い分子の分子プロファイル特徴も認識できるMIP吸着材料(特にMIPナノビーズ)を引き続き作製、評価する。また、匂いの吸着・分離・センシングに基づいた匂いクラスターセンシングシステムを構築・改良し、作製したMIP吸着材料の導入によって様々なクラスターに所属する匂いをセンシングする。最後に、生体の匂い、食品の匂いなど実際の匂いを対象とした検出・識別実験を行う。また、必要に応じて MIP 材料の作製とセンシングシステムのチューニングを繰り返しながら、本研究のセンシングモデル及びセンサシステムの有効性を証明する。
|