研究実績の概要 |
本年度は,L-bandマイクロ波偏波合成開口レーダの多偏波・多時期データを用いた植生のモニタリングについて,実データを用いての検討を行った.具体的な研究内容は,現地調査で植生の分布を調べ,多時期の多偏波データで植生データを偏波解析し,両者の比較を行った.テストデータとして,今年の8月と9月に偏波モードでの観測が行われた長崎の諫早の大規模干拓農地のデータを使用した.偏波解析では4成分分解法を用いて,干拓地で栽培されている野菜等の偏波情報を評価した.具体的には,4成分分解法と全電力で作物を比較してみた.8月を見ると土壌と大豆は,全てのパラメータでほぼ同じような結果になり,表面散乱が強く,次に体積散乱となった.2回散乱は6%程と非常に小さかった.トーモロコシは体積散乱の割合が大きく,2回反射散乱も大きかった.全電力の値もビニールハウスを除くと一番高くなった.また,紫蘇と雑草もほぼ同じような結果となり,ここでは体積散乱と表面散乱が大きくなった.9月は8月よりも耕作物の種類が増えた.9月の特性として,全体で二回散乱の割合が大きくなった.これは,オフナディア角(近似的に入射角)が大きくなったことで,2回散乱が起こりやすくなったものと考えられる.以上の結果から,オフナディア角が変わることにより,比較の土壌の偏波特性が大きく変わるため,植生のモニタリングでは,観測モードが同じで観測する必要があることが解った.また,4成分分解法は,耕作物による変化が大きく,作物の特徴を調べるのに適していることが解った.特に,ひまわりやトーモロコシでは2回散乱,大豆や紫蘇などは体積散乱,キャベツでは,2回散乱が非常に小さくなるなどの偏波特徴を確認できた.但し,サイズが小さい苗のような作物や土壌は同じ偏波特性,全電力の特性を示し,違いを確認できなかった.
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