本研究の目的は、パルス電界処理による細胞動態の変化を細胞電気定数から定量的に検証するとともに、マイクロ電極間に泳動濃縮された菌体群のインピーダンス値から細胞動態を迅速に把握できる診断システムを構築することである。 期間内において、(1)パルス幅に対する酵母細胞の活性および不活性領域(通常、膜損傷、アポトーシス誘導、生育促進)を蛍光染色により特定する、(2)誘電泳動速度計測から上記に示した4状態の酵母細胞に対する電気定数を導出する、(3)インピーダンス変化と膜損傷率・細胞増殖速度との相関を誘電泳動周波数ごとにマッピングし、各細胞動態に対応した特異点を選定する、(4)上記データからインピーダンスに対する診断用の検量線を作成する、(5)複数電極リアクタを導入して、泳動診断システムを構築する、(6)パルス条件の違いによる検出応答からリアクタ構造や検量線の妥当性を検証する計画である。 昨年度は、簡易診断の基盤としてインピーダンス応答を計測し、細胞動態との定量的な相関を検証した。具体的には、等価回路解析との比較からインピーダンス変化量と捕集菌量の定量的関係をより明確にした。また、損傷酵母の遺伝子発現を検出し、生物学的変位の判断指標を補強した。 以上の結果を踏まえ、本年度(平成27年度)は、最終段階である細胞動態に対する迅速かつ簡便な泳動診断システムの構築を試みた。すなわち、【課題1 診断用検量線の作成およびリアクタの改良】の具体的な成果として、改良した等価回路解析との比較から、捕集時における泳動速度およびインピーダンス検量線を策定した。また、【課題2 診断システムの性能評価】においては、電圧振幅、周期、パルス回数などパルス条件の違いによる検出応答を十分に精査し、検量線との関係性を検証した。
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