研究概要 |
本研究は,ロボットなどに応用することを想定し,ロボット前方の床面の静摩擦係数をロボットに搭載したカメラ映像により非接触で推定することを目的とする.非接触で摩擦係数をある程度推定できれば,ロボットの物体把持や歩行制御などに有用である. 床表面の粗さを,局所的な画像特徴量である微小形状特徴や,微小凹凸特徴として抽出し,機械学習によって摩擦係数の大小に応じたクラス分けを行い摩擦係数推定に利用する.照明が良好な状態で鉛直上方から床を撮像した画像を用いた場合には良好に推定可能である.しかし,本研究で用いる微小形状特徴は,均一なテクスチャからの特徴抽出のため,ロボット下方の床面で方向性のない素材だけが対象となっている.実際に実用に供すためには,前方数メートルの位置の床の摩擦係数をロバストに推定できる手法や,テクスチャの方向性による摩擦係数の違いを認識する必要がある. 初年度である平成25年度は,まず対象とする床種類を増やし,数多くの撮影条件かつ安価なカメラで撮像した画像でも安定した推定精度を出すために手法の改良を図った. 具体的にはキャンパス内の様々な床画像を数千枚撮像し,方向別,種類別などの様々な条件で画像を撮像し,前方床路面の推定を,SVMなどの機械学習により試みたが,現段階ではまだ単純な判別分析で前方床路面のクラス分けを行った方がよい結果を得られている. また,一方向への溝が並んでいるような素材など,方向性のある素材に対して,古典的なフーリエ・パワースペクトルで検出方向を検出し,最大摩擦係数を示す方向と直角方向の摩擦係数比を推定することを行った.まだ方向角度が二種類だけなため確実なことはいえないが,良好な結果を得られそうな感触を得た. さらに,カメラではなく,TOFセンサによる距離画像を用いて表面の微小凹凸の計測も試みたが,残念ながら必要な精度が得られなった.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方針としては,(1)方向別の推定と(2)前方路面の推定を引き続き実施し,それぞれの成果を得ることである.撮像画像の数や種類数などデータの拡充を行う.安価なカメラで撮像した画像でも安定した推定精度を出すために手法を改良する. また前方の床の推定を行う場合,坂道によって撮影角度が変わる影響も考慮しなければならない.撮影角度が変更されれば,当然撮像された画像に含まれる形状特徴にもそれに応じた歪みが生じ,得られる特徴量に影響を与える.これを考慮すれば,前方の撮影に際し,距離測定することで坂道や傾き,路面のゆがみなどの状況判断が可能となる.本研究の画像だけによる推定という目的に対して,距離測定なども見込んで,TOFセンサやステレオカメラを用いた撮影が考えられる.今年度に購入したTOFセンサは,床面の微小な凹凸を検出するには精度が足りないが,前方路面への距離測定には利用できる.TOFセンサとステレオカメラを用いた場合との比較検討を行う.
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