研究実績の概要 |
本研究は,ロボットなどに応用することを想定し,ロボット前方の床面の静摩擦係数をロボットに搭載したカメラ映像により非接触で推定することを目的とする.非接触で摩擦係数をある程度推定できれば,ロボットの物体把持や歩行制御などに有用である. 床表面の粗さを,局所的な画像特徴量である微小形状特徴や,微小凹凸特徴として抽出し,機械学習によって摩擦係数の大小に応じたクラス分けを行い摩擦係数推定に利用する.照明が良好な状態で鉛直上方から床を撮像した画像を用いた場合には良好に推定可能である.しかし,本研究で用いる微小形状特徴は,均一なテクスチャからの特徴抽出のため,ロボット下方の床面で方向性のない素材だけが対象となっている.実際に実用に供すためには,前方数メートルの位置の床の摩擦係数をロバストに推定できる手法や,テクスチャの方向性による摩擦係数の違いを認識する必要がある. 前年の平成26年度では,前方床路面と真下画像の判別を行った.残念ながら前年度と比較して大きな精度の向上には至らなかった. 今年度平成27年度では,微小形状特徴を人間が導入した9種類ではなく,ディープラーニングを画像解析に適応させたCNN(Convolutioanl Neural Network)を導入して機械学習手法によって有利な形状特徴量を自動的に抽出させることを行った.CNNにより抽出された重みフィルタは,正確には微小領域の形状特徴ではないが,本質的に微小領域内のパターンを抽出しており,形状パターンと呼称できる特徴である.従来使用していた微小形状特徴よりも精度よく推定できることが示せた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度の結果より,これまでの手法では推定精度の向上に限界が見えたため,今年度は最近進展が著しい機械学習を取り入れた.そもそもH27年度の計画としては,反射光特徴など別の特徴も検討し,推定精度の向上など本手法の拡張を考えており,それらを実際にロボットに搭載し,本手法を移動制御に応用することを試みる予定であった. しかし,ディープラーニングなどの機械学習手法による成果が大きく周知されており,計画を修正して本研究でもこれに取り組むこととした. これまでの実験結果と比較するため,機械学習を用いた摩擦係数の推定実験をやり直ししたため,目標達成率としてやや遅れている. これにより,これまで提案してきた微小形状特徴を使った推定よりも,機械学習により自動的に生成された特徴量を用いた方が精度が向上できる可能性が見出された.
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