研究実績の概要 |
2013年度には、後方ブリルアン散乱光の位相情報も含む測定法を明らかにした。 2014年度には、後方ブリルアン散乱光のスペクトルを高速周波数変換(FFT)処理によって周波数精度を劣化することなく解析する方法を明らかした。 今年度は以上の研究成果を踏まえ、光ファイバに入射する光プローブを、短パルスと長パルスを組み合わせて構成し、その短・長パルス光の位相は連続としたものと、πシフトさせた2種類とすることを提案した。そしてヘテロダイン検出した後方ブリルアン散乱光信号を、両パルスと同じ時間幅を有する2種類の窓関数WSとWLで切り出す。切り出した両信号の相互相関を多数回測定し、その平均をCWL(τ)とする。このときCWL(τ)には、狭い区間からの後方ブリルアン散乱光以外に、広い区間からの後方ブリルアン散乱光の情報も含まれる。そこで、本研究では上述の2種類の光プローブを入射して測定したCWL(τ)の差分を求める。2013年度の研究成果から、相互相関には位相の情報が記録されているので、差分計算により広い区間からの後方ブリルアン散乱光の信号は打ち消され、高い距離分解能での測定が可能となることが期待される。 FFTを適用して求めたCWL(τ)のスペクトルは、ブリルアン周波数シフトを中心とした狭い幅を有するものとなる。また、先行研究のダブルパルスBOTDR(DP-BOTDR)のときに観測されるリップルを含むこともない。その結果、ブリルアン周波数シフトの高精度な測定も可能となる。 光プローブのパルス幅を、TS=2 ns, TL=32 nsとした実験を行い、提案法によって高距離分解能測定が可能であること(実験ではTS=2 nsに対応した20 cm)、測定されるブリルアン散乱光スペクトルは狭く抑えられること(実験では50 MHz)の検証に成功した。
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