生産現場では製品が高絶縁材料との接触・剥離が繰り返され静電気が発生し、様々なトラブルを引き起こす原因になっていることから、高空間分解能かつ短時間で、静電気分布を計測できるシステムの開発が求められている。 本研究では、高空間分解能と高速計測を両立する静電気分布計測システムの開発を目指して、帯電した対象物を励振させ、低周波電界を誘起・検出することで静電気を計測する技術を開発してきた。まず、この静電気計測技術を基盤として、多点で誘起電界を同時計測するための小型センサアレイの開発を行った。そこではセンサのアレイ構造化によって隣接したセンサ同士が電界に関して干渉しない構造に最適化し、パッチアンテナ型センサを1 mm間隔で並べた構造を用いた。各センサのバラツキを比較したところ、各センサ間の最大誤差1.4 %のセンサアレイであり、空間分解能1mmで静電気分布を検出できるセンサアレイの開発に成功した。 またアレイセンサを水平に移動させたときの計測精度を評価したところ、アレイセンサ移動速度1 mm/sのとき95 %以上の計測精度であるのに対し、アレイセンサ移動速度20 mm/sのときは計測精度が30 %以下に低下することが分かった。これより90 %以上の計測精度を保つためには、アレイセンサ移動速度5 mm/s以下にする必要があることが明らかとなった。 この開発したシステムを用いて、細かく柔らかい繊維で摩擦したときアクリルの表面(30 mm×30 mm)を計測したところ、-1000 V ~ +1000 Vの電荷が不規則に存在する静電気分布を観測することに成功した。これより、静電気センサを並べて、それをスキャンし各空間位置における静電気を計測することで、短時間で静電気を可視化するシステムの開発に成功した。
|