研究課題/領域番号 |
25420428
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
飯田 仁志 独立行政法人産業技術総合研究所, 物理計測標準研究部門, 主任研究員 (40392584)
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研究分担者 |
木下 基 独立行政法人産業技術総合研究所, 物理計測標準研究部門, 主任研究員 (00415671)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | テラヘルツ絶対電力 / カロリメータ / 熱変換過程 / 不確かさ |
研究実績の概要 |
本研究ではテラヘルツ絶対電力測定用高精度センサの開発を目的として、これまでに等温制御型カロリメータの原理を利用したセンサを試作し基礎検討を進めてきた。平成26年度は当該センサの検出能力の改良及び測定精度に密接に関わる吸収体の熱変換過程の解析を行い以下の成果を得た。 センサ感度を向上させるためには、吸収体の吸収率や測定系の雑音特性を改善することが考えられる。前者は吸収体の形状により向上させることも可能であるが、不確かさの解析が複雑になることが明らかとなり後者の対応を優先して検討した。本センサは室温においてサブマイクロワットレベルの検出が可能であるが、さらなる感度向上のためには安定性と雑音特性に寄与する要因を明らかにする必要があった。その主要因を調査した結果、環境温度等の変動による外乱とプリアンプの安定性及び雑音であることがわかった。測定システムを熱的・電磁的に遮蔽する多重シールドボックスに設置することで外乱を抑圧することに成功した。同時にプリアンプ端子における熱起電力の影響が大きいことが判明し、当該端子の断熱対策を行った。さらに、超低雑音プリアンプを採用することによってセンサの雑音等価電力の改善が可能となった。これにより測定電力範囲を拡大しうるが、センサの直線性を検証することが重要となる。一般に高強度な光源と校正された減衰器が利用できれば直線性は容易に評価できるがテラヘルツ帯では困難である。そこで本研究では近赤外のレーザと電力計を利用し、吸収体特性を考慮して直線性を推定する手法を検討した。吸収体の熱変換過程に関しては、センサの熱解析モデルを構築し、有限要素法による熱伝導シミュレーションによって詳細に解析した。これによって、吸収体におけるテラヘルツ波の吸収過程と熱伝導過程を明らかにした。次年度はこれらの解析結果を踏まえて絶対電力測定の不確かさを定量的に評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成26年度は吸収体の吸収効率の改善と熱変換過程の解明、微弱熱量測定装置の改良を目標としていた。熱変換過程については計画通りに熱解析モデルを構築し有限要素法によって解析することができた。感度向上のため吸収体の構造設計による吸収効率の改善を目指していたが、不確かさ評価が複雑になるため新たな構造を設計せずに従来の平面構造を採用する方針に変更した。その代替案として、電気的熱的影響による不安定要素の解析を優先して進めた結果、次年度に計画していた安定性と雑音特性の改善に前倒しで取り組むことができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は平成26年度の成果を踏まえてセンサ素子の感度や安定性のさらなる向上を目指した改良を進めるとともに、当該センサの不確かさ要因を把握して定量的な評価を行う。主要な不確かさ要因としては吸収体に関連する要因と熱電変換過程に起因する要因が考えられる。前者についてはテラヘルツ分光装置による吸収率の精密評価と熱伝導シミュレーションによる不確かさの推定を行う。後者についてはセンサの雑音、ドリフト、均一性、再現性等が考えられるがこれらを総合的に評価して主要因を把握するとともにそれらを最小にすべく改良を進める。最終的には検出感度と再現性のトレードオフを考慮しつつ、拡張不確かさ5%以下を目標に研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
吸収体の構造設計及び試作に関し計画変更が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の計画では、センサ素子の不確かさの定量的評価のための物品費、成果発表のための旅費を計上しているが次年度使用額はその一部として使用予定である。
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