本研究ではテラヘルツ波絶対電力測定用高精度センサーの開発を目的として、これまでに等温制御型カロリメータの原理を利用したセンサーを試作し研究を進めてきた。平成27年度はセンサーのさらなる高感度化を目指してテラヘルツ波吸収による微弱熱量測定装置の改良を行い、絶対電力測定の不確かさ要因の把握と解析評価を実施して以下の成果を得た。 本センサーでは、テラヘルツ波電力を、熱電変換素子を利用した等温制御方式によって直流の電力に置換して測定する。サブマイクロワット以下の微弱なテラヘルツ波電力を正確に定量的に測定するためには、直流電力を高精度かつ安定に測定することが課題であった。超低雑音プリアンプを導入してセンサーの雑音特性を改善し高感度化したところ、さらに測定精度を向上するためには外部からの熱擾乱を抑圧することが極めて重要であることが判明した。検出器の周囲に真空断熱材を利用した多層の断熱遮蔽を施して測定系の最適化を行い、熱擾乱の影響を極限まで抑えることによって、常温において数十ナノワットレベルの高感度検出を実現した。 本センサーの不確かさ要因を詳細に解析した。吸収体の反射率、直流置換の等価性、直流測定などの不確かさ要因を定量的に解析し、主要因となっていた熱擾乱に起因する不確かさを改善した。測定の不確かさは、1テラヘルツにおいて、1マイクロワットの測定で2.4%、30ナノワットの測定で13%であり、常温においては世界最高レベルの感度でテラヘルツ波絶対電力を定め得ることを明らかにした。 本研究によって、液体ヘリウムによる極低温環境を必要とせず、常温において容易に使用できる高精度テラヘルツ絶対電力センサーを実現することに成功した。
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