本申請課題は,通信・計算機能を有する複数カメラをネットワーク化することで構成されるビジュアルセンサネットワークを対象に,ゲーム理論的学習理論に基づいて,各カメラの位置・姿勢・ズームというパラメータを分散的な情報処理によって最適化する分散協調型の能動センシング手法を提案することを目的とするものである. 期間を通じて研究は順調に進捗し,申請時に計画した課題は昨年度中におおよそ達成することができたため,その結果を当該分野において最も権威があるとされているIEEE Transactions on Automatic Controlに投稿し,Regular Paperとして採択・掲載された.本論文の査読プロセスにおいて,より現実的なシナリオへの適用を求められたため,本年度は当初は予定していなかったCyprus University of Technologyの研究グループとの国際共同研究を実施し,本論文はその成果として掲載された. また,ゲーム理論的アプローチの欠点である収束性の遅さを克服するために昨年度提案した行列多様体上の分散最適化手法に基づくソリューションを実験システムに実装し,その成果は当該分野の最難関国際会議の一つであるAmerican Control Conference 2015に採択され,発表後に書籍の執筆を求められるなど,高い評価を得た.さらに,実施計画に記載した通り,上記アルゴリズムのパラメータ数を削減する改良版と対象物の運動を分散協調的に予測するアルゴリズムを新規に提案し,シミュレーションによってその妥当性を検証した.これらの成果は現在ジャーナル論文に投稿準備中である.最後に,当初は予定していなかったが,これらの研究を効率的に進めるため,3DアニメーションソフトウェアであるBlenderを用いた複数カメラシステムのシミュレータを構築した.
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