期間を通じてデータを直接用いて制御器を設計・更新するFRITを中心として,安定化・ロバスト化・多入出力化という観点での拡大を試みている. 最終年度では以下の成果を得た.(1)むだ時間系に対する状態予測制御系に,FRITによる応答改善とモデルの精度向上を同時に行う手法を提案した.(2)先に提案した全状態オブザーバを併合した積分型サーボ系に対するFRITによりモデルと制御器の同時に更新する方法を,最小次元オブザーバに拡張した.(3)ユーラパラメータを併合した制御系に対しても同様な成果を得た.これらは制御とモデルの関係性に新視点を与えた意味でロバスト制御の関連成果といえる.(4)一般化内部モデル制御(GIMC)についてFRITにより自由パラメータを更新し,当初の制御性能を回復する制御器チューニング法を提案し,リアルタイム更新可能な形にも拡張した.これらの成果も一つのロバスト化に関連している.(5)FRITが応答特性を,VRFTが閉ループ特性をチューニングすることを明らかにし,それらを活かして二自由度制御系のチューニングに発展させた.VRFTにより閉ループ系の安定性を図る期待が見いだせたことは大きな前進である.(6)時変系に対する内部モデル制御に対してFRITを適用することで制御性能の改善方法を提案した.(7)さらに,二自由度制御系のフィードフォワード部をFRITによりリアルタイムで更新する効率的計算法を改良した.これらはレジリエントという意味の結果ではあるが,対象の特性変動に対応するという意味でロバスト化に関連する成果である. 以上のこの1年間の成果,および,過去2年間の成果と合わせて,データ駆動制御の多入出力化は行うことができ,安定化・ロバスト化も関連する重要な成果を多く得ることができた.
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