本研究の目的は実用的な飛行船の自動航行制御システムを開発することである。この鍵となる制御法が、本研究代表者が開発した「実用追従制御法」であり、追従偏差を漸近的に零に保証するのではなく、許容誤差を導入することにより、追従可能な目標経路のクラスの拡張、制御対象の非線形性・非ホロノミック性の緩和などの利点をもつ。本研究期間(平成25~27年度)での具体的な研究成果は以下のとおりである。 1)まず、実用追従制御法の適用可能なクラスを拡張した。これまで実用追従制御法は、制御対象として車両型移動ロボットに限定され、運動も2次元平面内に限定されていたが、本研究では、この制御法を3次元空間で運動する飛行体に拡張した。その結果、飛行船などの飛行体に対して、3次元空間での目標値追従を達成できるフィードバック補償器の設計法を開発した。入力変換などを工夫することで、飛行船の非線形最適化問題を、ある線形系の標準的な最適化問題に帰着させ、過渡応答などを最適化し、設計法も簡単化できた。さらに、目標軌跡の曲率に合わせて、最適な許容誤差を自動調整できる手法も開発し、過渡応答や制御入力などを緩和した。 2)姿勢角に4元数表現を導入し、運動可能な範囲を広げ、追従可能な3次元目標軌跡のクラスを拡張した。4元数に基づいた飛行体の非線形制御問題を、入力変換などを工夫することで、ある線形系の標準的な安定化制御問題に帰着させ、設計法を容易にした。 3)飛行船の動きなどのデータを用いて、風力などの外乱を推定する実用的な外乱オブザーバや、その推定値を用いてオンラインで制御器を自動調整することで、風外乱の状況下でも目標軌跡にすばやく追従できる新しい未知風外乱適応型の追従補償器を導出した。 以上の成果は、同定実験により得られた小型飛行船の物理パラメータに基づいた数値シミュレーションや実験により、有用性を実証した。
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