研究課題
最終年度の研究成果:医療技術が高度に進歩した現代社会においても,ジカ熱,エボラ出血熱やデング熱などの流行が世界的問題になり,感染症流行抑制・制御は依然として公衆衛生上の重要な問題である.そこで,ワクチン接種を考慮した感染症モデルを提案し,最適ワクチン接種戦略について考察した.従来,感受者,感染者,回復者,ワクチン接種などの個体群を対象に種々の感染症モデルが提案されているが,特に,非線形感染者発生率をモデルに反映した.また,従来の感染症モデルの大半は環境の変化や個人差に起因する感染率・回復率などの揺らぎを考慮しない確定的な感染症モデルである.そこで,本研究では回復率の揺らぎと非線形感染者発生率を考慮した確率感染症モデルを提案した.さらに,確率最大原理を用いて,最適ワクチン接種戦略を構築した.確率最大原理において現れる前向き後ろ向き確率微分方程式(FBSDE)の解をFour-step schemeを適用して求め,最適ワクチン接種戦略を構成した.最後にシミュレーションにより,提案した最適ワクチン接種戦略の有効性を検証した.研究期間全体の研究成果:(1)環境変化や個人差に起因する回復率や免疫喪失率などの不規則な揺らぎを取り入れた実際に即した確率感染症モデルを確率解析理論に基づき構成した.(2)感染症の流行と絶滅は各個体群の平衡状態の安定性と密接な関係があるので,確率分岐理論を適用して,感染者や回復者等の各個体群の平衡状態の安定性条件を明らかにした.(3)確率最大原理を用いて,最適感染症抑制戦略の構成法を明らかにした.(4)シミュレーションにより提案した最適感染症抑制戦略の有効性を検証した.(5)確立した感染症抑制戦略の改善を行い,実際問題への応用の基礎を確立した.
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