研究課題/領域番号 |
25420443
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
大屋 英稔 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 准教授 (30361835)
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研究分担者 |
中野 和司 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (90136531)
山口 芳裕 杏林大学, 医学部, 教授 (10210379)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 心電図波形 / ウェーブレット変換 / 高精度識別システム |
研究概要 |
本研究課題では,心室細動のみでなく,心室頻拍などについても高精度で識別できるシステムの構築を目的とし,1.高精度識別システムの検証,及び実用化,2.心電図波形の状態遷移と患者の状態(自己心拍再開例)との関連性と評価方法,3.日本人,及び外国人の心電図波形データの特徴の検討といった3点に絞って研究を進めている.本年度の研究の主体は,3ヵ年計画の第1段階である高精度識別システムの検証,及び実用化作業にあり,心電図波形データを効率的に記録・集積する新規レコーダの設計・導入作業を含め,予定していた作業を完了した.具体的な内容は,以下のとおり. (1)新規レコーダの設計・導入 システムの検証に用いる心電図波形データを効率的に記録・集積するために,心電図波形データ記録用のレコーダを杏林大学医学部付属病院高度救命救急センターに設計・導入し,記録されたデータ(自己心拍再開例,非再開例)を集積し,整理・分類した. (2)高精度識別システムの検証 杏林大学医学部付属病院高度救命救急センターにおいて記録された心電図波形データのみでなく,AHAデータベースやMIT-BIHデータベースに記録された心電図波形データを用いて,これまでに開発してきたシステムの識別精度(感度,特異度)の検証作業を実施した. 本年度に新規に導入したレコーダにより,心電図波形データをより効率よく記録・分類できるようになったため,患者の状態変化に対応した心電図波形の変化,あるいは電気的除細動適用後に自己心拍を再開した例などについて,今後詳細に検討する予定である.また,提案するシステムの識別精度向上や高速化のためのカスタマイズについても継続して実施する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は,3カ年計画となっており,研究初年度にあたる本年度の主体は,「高精度識別システムの検証,及び実用化」にある.従来,杏林大学医学部付属病院高度救命救急センターに設置されていたレコーダは,心電図波形データ,音声データ,および画像データを同時に記録できるものであるが,解析のためにデータをメディアへの保存が容易ではない状況にあった.そこで,心電図波形データを効率的に記録・集積するために,新規にレコーダの設計・導入し,従来同様に心電図波形データ,音声データ,および画像データを同時記録を可能としながらも短時間でメディアに保存できるようになった.また,本研究課題で開発する高精度識別システムの検証(識別精度(感度,特異度))については,杏林大学医学部付属病院高度救命救急センターでこれまでに記録された心電図波形データ,ならびにAHAデータベースなどのデータを用いて検証を進めており,従来に比べて精度の高い識別が可能となった.更に,識別の精度のみでなく,処理時間についても検討を進めており,ほぼ目的とする処理時間内での識別が行えるようになっている.
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今後の研究の推進方策 |
本年度に杏林大学医学部付属病院高度救命救急センターに設計・導入した新規レコーダーによって,従来に比べて効率的に心電図波形データを記録・集積できるようになったことから,平成26年度,27年度は,次の2つの作業を進める.具体的には以下の通り. (1)心電図波形の状態遷移と患者の状態(自己心拍再開例)との関連性と評価方法 まず,杏林大学医学部付属病院高度救命救急センターで記録された症例において,自己心拍を再開した例と再開しなかった例(心静止等)を整理・分類する.次に,分類したデータをウェーブレット解析して特徴を抽出し,患者の回復との関連性を検討する.また,心電図波形の特徴と患者の回復に関する評価方法を検討する. (2)日本人,及び外国人の心電図波形データの特徴の検討 これまでの解析において,例えば,心室細動では,日本人の方が1[Hz]程度周波数が高いといったケースが見られるため,AHAデータベースなどの各種データベース,および杏林大学医学部付属病院高度救命救急センターで記録される心電図波形データを分類・解析し,日本人の心電図波形データと外国人の心電図波形データの特徴の差異を明らかにする. 以上の作業を主体に進めるとともに提案する高精度識別システムの感度・特異度の検証,ならびに識別精度向上や処理の高速化等,実用化に向けたカスタマイズについても引き続き実施する.
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