研究課題/領域番号 |
25420449
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
関 弘和 千葉工業大学, 工学部, 教授 (90364900)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 筋電義手 / 前腕動作識別 / 運動制御 |
研究実績の概要 |
本研究は前腕部筋電位信号によるロバスト動作認識に基づく筋電義手制御システムの開発を目的としている。研究期間は3年であり平成26年度はその2年目となる。3年間の研究期間全体として,①最適測定位置推定法の開発,②前腕部動作のロバスト識別法の開発,③筋電操作の訓練支援法の開発,④筋電義手制御法の開発と実験,⑤被験者実地評価を具体的課題として挙げており,平成26年度は主に②,③,④について取り組んだ。②については肩・肘の姿勢角度変化対応型動作認識手法の開発を行った。肘を0度から90度へ連続的に変化させた際の筋電位を解析し,姿勢変動により筋電位が変化することを確認した。これらを基にファジィ推論を応用した識別法を構築し,測定した任意の姿勢角度において動作識別を可能にする手法を提案した。これまでの基礎的検証では90%程度の高い認識率を実現できた。③については,LabVIEWを利用し,被験者の筋電情報や動作認識結果をリアルタイムに画面上に提示し視覚フィードバックによる操作訓練を行うシステムを構築した。被験者はまだ少ないものの,数日単位の操作訓練により動作認識率が向上することを確認できた。④については,平成26年度までに購入した義手装置とコントローラ等を元に全体の制御システムを構築し,制御プログラムの開発,基礎的な動作実験などを行えた。このように3年計画の2年目は,姿勢変動を含む実地環境における高精度な動作認識を実現し,さらに筋電操作の基本的な訓練システムの開発,義手制御システムの開発という最終研究年度につながる,ほぼ計画どおりの成果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は3年間の実施期間を設けており,平成26年度はその2年目にあたる。平成26年度における研究計画について,当初の予定では,②前腕部動作のロバスト認識手法の開発,③筋電操作の訓練支援法の開発,④筋電義手制御法の開発と実験の三つを設定していた。②については前年度から検討していた姿勢変動に対応した動作認識手法の開発を目指し,肘角度が0度から90度へ連続的に変化する際の筋電データを基にファジィ推論を応用して動作識別を行う手法を提案し,90%を超える高精度な認識を実現した。被験者を増やしての検証やファジィ設計の改善などを行う余地は残るが,②に関しては90%程度,当初の計画を遂行できたと言える。③については,被験者の筋電情報や動作認識結果をリアルタイムに画面上に提示し視覚フィードバックによる操作訓練を行うシステムを構築でき,数日単位の訓練により動作認識率が向上することを確認できた。被験者を増やし,提示情報もさらなる検討を行う必要があるが,50%程度遂行できたと言える。④については,義手制御システム全体を構築し基礎的な動作実験などを行える段階に至り,今後様々な制御手法を組み込んでいくことになり,50%程度遂行できたと言える。これらを総合して研究達成度は80%程度であり,「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は平成27年度の1年間を研究期間として残しており,平成25,26年度までの成果を基とし、②前腕部動作のロバスト識別法の開発に関する最終検討,③筋電操作の訓練支援法のさらなる検討,④筋電義手制御法の開発と実験,⑤被験者実地評価,を実施していく。②については現在開発中の姿勢変動対応のためのファジィ推論型動作識別法について,肩の姿勢角度変化やファジィ設計の細部も含めた最終検討を行う。③については,ディスプレイ上に筋電位波形やその目標値,識別結果などを提示し,被験者がそれを見ながら操作を繰り返すという視覚フィードバックにより訓練を行う基本的システムは構築できた。今後さらにファジィメンバシップ関数による可視化や,主成分分析による低次元化情報など,提示する情報のさらなる検討と習熟度向上の検証をしていく。④については,全体の義手制御システムを構築し基礎的な動作実験などを行えた。この環境を基にさらに,人間らしい動作を伴う使いやすい義手制御の実現,操作者が違和感を感じないようなリアルタイム制御の実現と遅延時間等の検証も行い,ボトルの持ち運びなどを例とした⑤の実地検証試験へつなげていく。研究推進のための人員としては,研究代表者以外に,研究室大学院生3名,卒研生3名を予定している。
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