研究課題/領域番号 |
25420450
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
相吉 英太郎 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (90137985)
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研究分担者 |
安田 恵一郎 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (30220148)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | システム最適化 / ネットワーク最適化 / エネルギーシステム / 分割解法 / 価格調整則 / 分散市場 |
研究概要 |
(1)スマートコミュニティにおいて複数種のエネルギーを融通するシステム(ここでは「スマートコミュニティシステム」と称することにする)を、単一種類のエネルギーフローを表す部分ネットワークを複数接続したネットワークで表現してモデル化した。このいわば「多連結型ネッワーク」では、時刻ごとにエネルギー収支が成り立つ「分岐節点」、蓄積機能をもち時間遅れのあるエネルギー収支が成り立つ「蓄積節点」、異種のエネルギーへの変換が行われる「変換節点」の3種類の節点(ノード)と、それら間を連結する弧(アーク)からなる。 (2)スマートコミュニティにおける複数種のエネルギーの需要を満たしつつ、それらの融通を最適に運用する問題を、(1)でモデル化したネットワークに対する最適化問題として定式化した。そこでは、ネットワークでのすべての節点でのエネルギー収支を等式制約条件、弧容量を不等式制約条件とし、これらの制約条件を満たす範囲内で、すべての弧の流れを決定する問題である。 (3)異種のエネルギーへの変換が行われる「変換節点」への流入弧ないしは流出弧上に、さらに「市場機能」を有する「市場節点」を設け、市場節点への流入量(売却量)と市場節点からの流出量(購買量)を均等させる制約を課し、この等式制約に対するLagrange乗数を市場価格とし、定式化したネットワーク最適化問題に対して、それら市場価格による分割解法を提案した。 (4)上記の分割解法によって、エネルギーごとの部分ネットワークを管理する主体による、分散的なエネルギーフローネットワーク最適化と、それらの下での市場機能による価格調整則による全体的最適化を実現する方法論を提唱し、簡単な例題によるシミュレーションによって、その有用性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書による25年度の研究実施計画は、スマートコミニティシステムにおける複数種のエネルギーを融通し合うシステムのモデル化と、その最適運用問題の定式化、さらに市場機能の導入による分散的最適化手法の提案としていた。交付申請書では、モデル化されたネットワークを「多連層型多品種フローネットワーク」と称したが、試行錯誤のうえ定式化を実際に試みた結果、単品種のエネルギーフローに対応したネットワークを多数連結した「多連結型ネットワーク」と称するものである点が、計画当初の予想と違うものの、電力・ガス・蒸気・熱のフローを想定した単純ではあるものの比較的汎用的なモデルの導入に成功し、25年度における目標と計画を達成し、この成果を2件の学会講演によって公表した。 また、市場機能の導入による分割解法も提案し、簡単なシミュレーションによりその有効性を確認したが、市場機能によるネットワークの分割と、価格調整則の提案までを学会講演で言及した。とくに価格調整則による市場機能は、制御工学における積分調節器によるフィードバック制御システムであることを明示することができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)多種のエネルギーを融通し合う「多連結型ネットワーク」の最適化問題を、分割されたエネルギー種ごとの部分ネットワークのフローを最適化する下位問題と、市場節点における売却量と購買量を均等にする最適価格を決定する上位問題からなるより一般的な2レベル構造の最適化問題として定式化しなおし、その最適価格の決定にLagrange未定乗数法に基づく調整則ではない新たな手法、たとえば多点型ヒューリスティックスを用いた手法を提案する。これによって、Lagrange未定乗数法の適用の前提である凸性の条件を回避し、変換節点のおける変換機能が非線形の場合にも解くことができるようにする。 (2)従来型の単純な価格調整則についても、フィードバック制御システムの制御則とみなし、この調整機能の発展型として、最適化機能を導入したモデル予測制御の考え方を調整則に導入し、最適価格に自動的に追従する手法を、時間帯別料金設定(Dynamic Pricing:DP)の考え方として提案する。 (3)上記の成果を、異種エネルギーの融通を目的とした新たなエネルギー管理システム(Energy Management System:EMS)の提案に結びつける。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費は主としてデスクトップPCとこれらを使用するに当たっての付属消耗品に当てたが、これらの経費への使用が予算よりも下回ったため。 上記PCを次年度も引き続き使用するに当たっての消耗品費に充てる計画である。
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