研究課題/領域番号 |
25420450
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
相吉 英太郎 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (90137985)
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研究分担者 |
安田 恵一郎 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (30220148)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | システム最適化 / ネットワーク最適化 / エネルギーシステム / 分割解法 / 価格調整則 / 分散市場 |
研究実績の概要 |
スマートコミュニティにおける異種エネルギーを融通するエネルギーフローをモデル化したネットワークとして「多連層型多品種フローネットワーク」提案した。とくに異種のエネルギーが変換される変換節点、エネルギーの売買を想定した市場機能を有する市場節点を設けた新しいネットワーク概念を提唱し、そこにおける最適化問題の定式化と、ラグランジュ関数法を用いた分割解法を与えた。 とくに、変換器が非線形特性を有する場合、凸性の仮定を前提とするラグランジュ関数法による価格調整を用いた分割解法の適用が困難なため、拡大ラグランジュ乗数法を用いる新たな分割法を提案し、これを用いたエネルギーフローネットワークの分散型最適化手法を開発した。この場合、各部分ネットワークを管理する主体によるNash均衡解の探索を考慮して最適な市場価格を決定する2レベル最適化問題となるが、価格調整則に勾配法などの解析的手法を用いることができないため、ヒューリスティック最適化手法を用いた分割手法を開発した。 なお、ヒューリスティックな最適化手法として、多点型確率的最適化手法(メタヒューリスティクスとも称せられる)であるPSOの特性を、解きたい最適化問題に適応的にそのパラメータをGP(Genetic Programming)を用いてチューニングする手法や、多点型確率的最適化手法を計算時間内で持続探索させて大域的最適解を探索させるために、そのパラメータを安定-不安定境界領域に設定する計算モデルの一般的枠組みも開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書における26年度の研究実施計画では、市場機能の導入による自律分散型最適化手法を提案し、分散市場での価格決定の数理的性質を考察することであった。とくに以下の点で有力かつ新たな知見を得ることができた。 (1)変換節点の変換特性に非線形性がある場合、ラグランジュ関数法が適用できないのに対して、拡大ラグランジュ関数法を適用した新たな分割解法が開発できたこと。 (2)分割された部分最適化問題間の干渉のためにNash均衡解を求めることになるため、ヒューリスティック解法を用いることで、その価格調整問題を解くことができること。 (3)ヒューリティック解法としてPSOを改良した多点型確率的最適化手法を開発したこと。 とくに、変換節点の前と後のどちら側に市場節点を設けるかによって、それらの市場で売買される最適価格が大きく異なり、その差異がさらに変換節点におけるエネルギー変換効率に大きく依存するという経済学では得られていない新しい数理的な知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの定式化では、各種のエネルギー需要が一定値だけでなく、時間的にも変動する場合を想定し、また一部のネットワーク節点には蓄積機能による時間的畳み込みを想定した動的なネットワークフローを考えているが、一定期間のエネルギー重要は予測に基づいてあらかじめ与えられているものとしている。 これに対して、最終年度における研究の推進方向として、以下の計画を立てている。 (1)時間経過とともに需要が予測値から揺動するたびに、最適化問題を拡大ラグランジュ関数法を用いた分割解法により逐次繰り返し解き直すいわば需要モデル予測型繰り返し最適化の考え方を導入する。 (2)需要予測からの揺動幅を想定し、この範囲のどのような揺動に対してもロバストな最適供給と最適融通を決めるロバスト最適化の考え方を導入する。 (3)より大規模なエネルギーフロー問題に適用する。
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