研究課題/領域番号 |
25420451
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
サイ 貴生 芝浦工業大学, システム工学部, 教授 (30304190)
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研究分担者 |
尾崎 克久 芝浦工業大学, システム工学部, 准教授 (90434282)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 切替えシステム / 量子化誤差 / 実用安定化 / リヤプノフ関数 / 漸近安定性と安定化 |
研究概要 |
本年度では,量子化信号が存在しない切替え・ハイブリッドシステムについてε-実用漸近安定性が達成する切替え信号を与え,その切替え信号のもとで量子化誤差が各サブシステムのフィードバックループに生じた場合に全体システムの振る舞いを定量的に解析している.コンピュータ制御の環境であれば必ず存在する量子化信号について,本研究では主に(1)制御器からサブシステムへの入力;(2)サブシステムから制御器への入力に対する(異なる)量子化器を想定する.これらの量子化信号の存在でシステムの平衡点が移動し,各種安定性も保証できなくなる.上記の量子化信号が生じた場合について,既存文献で提案している不変集合に基づくアプローチを切替え・ハイブリッド系へ拡張し,システムの振る舞い(各サブシステムの平衡点の移動と,ε-実用漸近安定性を達成する上界ε)を定量的に評価している.さらに,漸近安定性の度合いを示す不変集合の大きさを徐々に減少させることによって,切替え・ハイブリッドシステムのε-実用漸近安定性を所定レベルに達成する.理論的な証明は基本的に区分的リヤプノフ(あるいはリヤプノフライク)関数アプローチを用いて行われた. 数値シミュレーションはMATLABとSimulinkを用いた.実験装置については,複数台のレゴマインドストームロボットのリレー制御を考えていた.コンピュータとロボット間の通信によって量子化誤差が生じる.また,複数台のロボットがリレーして荷物を搬送することを想定して動かすことによって,切替え制御の環境を想定して構成している.制御仕様としていかに効率よく指定場所と方向へロボットを動かすかに設定し,それを検証することによって理論結果とアルゴリズムを確かめた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で考えている三種類の量子化信号について,平衡点が異動しない(原点のままの)場合は,いずれも先行研究で単独システムの解析と設計へ与える影響を定量に評価していたため,それらの結果と切替えシステムのアプローチとを組合わせることによって順調に研究を進めることができた. 量子化信号が存在して平衡点が移動した場合は,いわゆるパラメートリック安定性の概念を用いて安定解析を行わなければならない.このときのL2ゲイン解析や設計はまだ利用できる実用的な既存研究がない.一つの考え方は不変集合を構築し,その集合の大きさを徐々に小さくしていくことである.
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今後の研究の推進方策 |
今後二年間の研究期間では,まずはこれまでの定量評価に基づいて,全体システムが同じ実用漸近安定上界εを達成するための量子化パラメータ調整アルゴリズムを提案する.さらに,漸近安定性に加えて切替えシステムが達成するL2ゲインへの影響も定量的な評価を行う.各提案や評価に用いるアルゴリズムは実装を意識して計算量や計算精度についても考察する.次に,量子化パラメータと切替え信号の同時設計を考える.具体的に,代表者の既存研究論文に提案した切替えアルゴリズムを量子化切替えシステムに拡張し,それからε-実用漸近安定性に加えて望ましいL2ゲインを達成するための切替え信号を設計することが考えられる.いずれの問題でも量子化パラメータや切替え信号の同期問題が重要となるため,各アルゴリズムの中でその同期問題について解決策を提案する. 数値シミュレーションはこれまでの通り,研究室にあるMATLABとSimulinkを用いる.実験装置については,コンピュータによる複数台のレゴマインドストームロボットのリレー制御を考えている.コンピュータとロボット間の通信によって量子化誤差が生じる.また,複数台のロボットがリレーして荷物を搬送することを想定して動かすことによって,切替え制御の環境が構成できる.制御仕様としていかに効率よく指定場所と方向へロボットを動かすかに設定し,それを検証することによって理論結果を確かめる.
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度に計画していた国際会議の一部は学内業務などで都合が付かず行けなかったため,次年度の国際会議へ回した.さらに,実験物品関連では生産中止か遅延のものがあったため,調達できなかった. 人件費の部分については予定していた研究員のビザが間に合わず来日できなかったため,実装するアルゴリズムとプログラムの開発ができなかった. 昨年度に行けなかった国際会議(IEEE Conference on Control and Decision)に参加する.そして,制御関連のマルチ国際会議MSC2014に参加し,研究成果を発表する予定である. 研究成果の確認のため,昨年度に調達できなかった実験物品を購入する.また,実装するアルゴリズムとプログラムの開発に研究員を雇い,人件費に使う.
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