本研究では,量子化誤差を有する複数のサブシステムから構成された切替えシステムの実用安定性と安定化問題を考える.量子化誤差の存在によって各サブシステムが共通な平衡点をもたない可能性があるため,本研究の目標は切替えシステムが望ましい平衡点へ実用漸近安定性を達成するための,量子化器パラメータの調整法及び切替えアルゴリズムを提案することである.さらに,実用漸近安定化に加えて外乱抑制のためにL2ゲイン解析と設計まで結果を拡張する. 最初の3年間では当初の研究計画通り,量子化信号が生じた場合に切替え・ハイブリッドシステムがε-実用漸近安定性を達成する十分条件とその切替えアルゴリズムを提案していた。具体的には,各サブシステムの平衡点移動を見積もり,ε-実用漸近安定性を達成できるεの上界を評価して漸近安定性の度合いを示す不変集合の大きさを徐々に下げていくアプローチを用いた。理論的な証明は区分的リヤプノフ関数を使って行われた。 最終年度では量子化器による影響を考慮して時変型切替えアファインシステムの安定性とL2ゲイン解析・設計について考察し,研究結果を拡張した。具体的に,各サブシステムのシステム行列の凸結合が安定行列となり,ドリフト項(常数ベクトル)の凸結合がゼロである条件の下で,切替えシステムの二次安定化を実現するための切替えアルゴリズムを提案した。ドリフト項(常数ベクトル)の凸結合がゼロでない場合は状態の収束可能集合を考えることができる。さらに,外乱入力と制御出力を有するアファイン切替えシステムについて,同じサブシステムの凸結合条件に基づき,二次安定化と望ましいL2ゲイン指標を達成できるための切替えアルゴリズムを提案した。この成果は将来に一般の切替え非線形システムの漸近安定化に対しても線形近似を考えることによって拡張できると考える。
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