研究課題
本研究の第一目的として、射出圧の立ち上がり・立ち下がりの推定遅れの改善を図り、射出圧の広帯域なセンシングを実現することである。昨年度までに射出材料考慮した低次元化モデルを用いた圧力推定法を提案し、射出圧の立ち上がり時の推定遅れ時間を従来法と比較して約60%に改善できた。さらに、定常偏差の改善として力伝達効率を力センサレスで同定する摩擦フリーオブザーバを設計して定常偏差を従来法と比較して約90%低減できることを検証した。そこで、本年度においては、射出圧の立ち下がりの推定遅れの改善と詳細な摩擦モデルを構築して射出圧の推定精度を改善する手法について検討した。まず、高次外乱オブザーバにおいてディザ信号の影響を除去する2次系モデルの減衰係数に着目し、減衰係数が推定値に与える影響を検証した。その結果、これまで一定値としていた減衰係数を最適値に設定することで推定遅れを大幅に改善できることが確認できた。そこで、圧力立ち下がり時における最適な減衰係数の決定と最適値への自動切替型オブザーバの設計を行った。提案手法を用いることにより,従来法に対して推定遅れを約1/4まで改善でき,かつ定常状態に関しても従来と同精度の力覚推定が可能であることを確認した。一方、定常状態の推定精度の改善方法として、機械的摩擦を推定アルゴリズムに積極的に取り入れる手法について検討した。摩擦モデルとしてストライベックモデルを取り入れ、実機実験に基づいてクーロン摩擦力やストライベック速度、最大静止摩擦力を同定した。提案するストライベックモデルを力覚オブザーバの前段に配置することにより従来法に対して定常偏差を約1/3に減少させることができた。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度では、改良したセンサレス力覚推定アルゴリズムに基づいた先端射出圧フィードバック制御系を実現することを目的として研究活動を行った。学会での報告は行っていないが、卒業研究テーマとして推定値をフィードバック信号として用いる制御系の設計法について検証した。研究結果から、推定遅れが制御対象の動特性に位相遅れとして影響を与え、制御系が不安定に陥ってしまうことが明らかとなった。そこで、本年度においては立ち下がりの推定遅れ改善を最優先し、並行して推定遅れの影響をシミュレーションにて確認している。本年度では、新たに提案する力覚推定アルゴリズムによって過渡特性ならびに定常特性を大幅に向上させたことにより、時間遅れ等による煩雑な制御系設計を行うことなく容易になると考えられる。以上のことから、制御系設計上の問題点を改善したことから本年度の目的に概ね達成できていると考えている。
平成25、26年度にて提案した射出材料を考慮した機械モデルとパラメータ自動切替モデルを用いた統合した射出圧推定アルゴリズムを提案し、新たなオブザーバ設計法を検討して先端射出圧フィードバック制御系を構築する。全射出工程での高精度な推定アルゴリズムを確立することができたので、センサレス力覚フィードバック制御系としては、予め設定されたモータのトルク指令値の含有周波数に応じたゲインスケジュールを行う新たな制御系を構築を検討する。制御手法の有用性を検証するために、Matlab/Simulinkを用いた詳細モデルによるシミュレーション解析を行った後に「先端射出圧高速フィードバック制御」を実機への搭載を行う。さらに、提案するシステムの評価方法として、動作性能や製品精度、エネルギー効率を含めた方法を検討する。
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