研究実績の概要 |
H24-27年度 日本におけるマスコンクリートにおけるDEF膨張のリスクの検証(基盤研究C, 課題番号:25420457)を通して、供用後に数年で生じるDEFによる膨張劣化の生起条件とメカニズムの検討を行い、今年度のマスコンクリートにおけるDEF危険性に関して次のような研究成果を得た。 1)部材厚さの大きいマスコンクリートでも、セメントの水和熱による断熱下での温度上昇が70℃以上達した場合には、セメントの種類や配合に関わらず、内部のエトリンガイトが不安定になり分解する。その後、外部からの水分供給が十分ある場合には、エトリンガイトの再生成が起こる。2)エトリンガイトの再生成が起った場合でも、膨張にともなうひび割れが発生するケースと膨張が生じないケースがある。DEF膨張ひびわれにおいて、エトリンガイトの再生成は必要条件である。マスコンクリートにおいてもDEF膨張ひび割れが生起する可能性はある。3)エトリンガイトの再生成の時期と、膨張の開始時期には、タイムラグがあり、再生成後、15週間程度遅れて、膨張が発生する。エトリンガイトの再生成が停滞しても膨張は継続する。4)70℃以上の高温に曝されたコンクリートで、膨張ひび割れが生起するには、エトリンガイトの再生成は必要条件である、その中に小さなエリアとして、DEFによる膨張ひび割れが起こる領域がある。これについての十分条件には、コンクリート中のSO3量、C3A量、Na2O量などが関係している。C3A量が高い普通セメント、早強セメントを使用した場合にではDEF膨張が生起しやすく、C3A量が少ない中庸熱セメント、高炉セメントなどの混合セメントでは膨張は発生しにくい。 これらの知見をもとに、日本コンクリート工学会「マスコンクリートのひび割れ制御指針2008」の改訂版(2016予定)への基礎資料として集約した。
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