本研究では繊維種類,セメント量などが異なる様々な配合のSHCC供試体を作製し,供試体内部へのひび割れを通じた塩分浸透,供試体内部の鉄筋に対する防食性を検討する実験を行った. まずSHCCで作製した供試体を作製し,一軸引張を与えてひび割れを導入し,供試体をNaCl溶液に浸漬させることと乾燥させることを繰り返す乾湿繰り返し試験を行い,物質侵入抵抗性と鉄筋防食試験を行った.その結果, SHCCのひび割れからの物質侵入抵抗性については,PE繊維を用いた供試体よりPVA繊維を用いた供試体の方が塩化物イオン量は低かった.また,SHCC内の鉄筋の腐食面積率は,ひび割れ本数や,モルタルマトリックスの水セメント比に大きく依存することが明らかになった. さらに,塩害を受けた鉄筋コンクリートへの吹き付け補修を想定して,コンクリートとSHCCの積層曲げ供試体を作製し,NaCl溶液による乾湿繰返し試験を行い,SHCC補修材の鉄筋防食性能を行った.その結果,PVA繊維を用いた供試体の方がPE繊維を用いた供試体よりも若干鉄筋腐食面積率が大きくなった.また水平面に吹付け打設した場合には垂直面への吹付け打設の場合と比べて腐食面積率が大きくなった.さらに,鉄筋腐食には供試体のひび割れも大きく影響するが,ひび割れ性状と腐食面積率,質量減少率それぞれの関係にモルタルマトリックスの水セメント比が与える影響は確認できなかった.
|