鉄筋コンクリート構造物が火災を受けると,表層部が爆発的に剥離・剥落する爆裂現象が生じる.コンクリートが剥落すると内部鉄筋は露出し,高温により強度が大きく低下する.この爆裂現象は,高強度なコンクリートほど発生しやすいと言われている.既往の研究により,爆裂現象は,熱応力説と水蒸気圧説,そしてその複合作用により生じるとされる.爆裂現象の抑制方法は,耐火被覆材を設置する方法と水蒸気圧低減効果ならびに熱応力緩和効果を期待して合成繊維(ポリプロピレン繊維など)を混入する方法が一般的である.しかし,熱応力説と水蒸気圧説のどちらが支配的か,PP繊維混入による爆裂抑制対策の適用範囲をどの様に判断するのか,などの課題もある. そこで,本研究では,火災時の高強度コンクリートの耐爆裂性評価手法を提案することを目的として,拘束リングの内部にコンクリートを打設した供試体を一面加熱する方法により,拘束状態下でのコンクリートの拘束応力と爆裂性状の関係が評価できるか試みた. 平成25年度は,水蒸気圧の計測方法の高度化を行った。供試体中にパイプ(内径:2mm)を差し込み,パイプと圧力計を接続し加熱に伴うコンクリート内部の水蒸気圧の上昇をパイプ先端の開口部より計測した。パイプは,加熱面に平行に設置した。パイプ内に圧力を伝える媒体(シリコンオイル)を注入した。注入の方法が計測値に影響を与えるため,注入方法を検証した。すなわち、注射器を用いる方法とポンプを用いる方法を試した。蒸気圧の計測値が正しいかどうかは,飽和水蒸気圧曲線(水蒸気圧と温度の関係)から検証した。加えて,圧力媒体の充填が計測値に影響するため,充填方法(ジャッキ,注射器)の検討も行った。その結果、注射器でシリコンオイルを注入後、振動を与えてエア抜きし、初期圧力を0.05MPaほどかけることで計測値が安定することがわかった。
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