鉄筋コンクリート構造物が火災を受けると,表層部が爆発的に剥離・剥落するいわゆる爆裂現象が生じる。コンクリートが剥落すると内部鉄筋は露出し高温により品質は大きく低下する。その結果,構造物の耐荷性能は著しく損なわれ,極めて危険な状態となる。鎮火後の構造物の復旧に際しても,費用の増大は避けることができず,社会的な損失は大きなものとなる。これらのことから,爆裂はコンクリート工学における重要な研究テーマとなっている。そこで、本研究ではコンクリート爆裂評価試験としてリング拘束試験を提案した。この試験方法を適用し養生期間の異なる供試体において,PP繊維の添加効果を検討した。その結果、以下の知見を得た。(1)養生期間を2ヶ月および12ヶ月としたHSCシリーズにおいては,長期間の養生によって含水率が低下することで,加熱時に発生する水蒸気圧が低下し,爆裂規模が小さくなる傾向を示した。 (2)HSC+PPシリーズにおいては,養生期間の差による各種評価結果への大きな影響は認められず,養生期間が2ヶ月の供試体の爆裂規模は,6mm程度表層部が剥離している程度であった。 (3)養生期間を2ヶ月としたHSCシリーズにおいては,爆裂発生指標のひずみ破壊指数を用いて定量的に爆裂深さを精度よく推定可能であることが確認できた。 (4) 含水率の影響も含めて最大爆裂深さを精度よく推定することは,引張ひずみ破壊指数のみでは不十分であることが確認された。以上より、本研究で提案したリング拘束試験が爆裂評価を実施できる可能性があることが明らかとなった。
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